Yoshinori Hayashi - Asylum EP

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  • 多くのアーティストでひしめくエレクトロニックミュージックシーンでは、あらゆるサウンドが制作されているが、Yoshinori Hayashiが得意とするサウンドを制作している人は稀少だ。実際のところ、あのサウンドを作っているのは彼だけなのではないかと思えてくる。昨年、Going Goodへ提供したファーストEP「The End Of The Edge」は、荒々しく降り注ぐ生楽器の音に対して電子音をループさせ、いびつなサイケデリアの中をハウス的な陶酔グルーヴがうねるという、様々な要素が入り混じったものだった。今年に入ってからは、そうした要素が入り混じるのではなく分離してきているようだ。この夏にJINNから発表されたEP「The Forgetting Curve」はかなり逸脱した内容で、同作で堅実だったのはSotofettのリミックスくらいだった。一方、Ital主宰のLovers Rockに提供されたEP「Asylum」は比較的落ち着いた印象だ。とはいえ、それは第一印象にしか過ぎない。 "Agent Dissolving Device"はバウンシーなハウスビートが打ち込まれているのでダンスミュージックと言えるかもしれないが、渦巻くように揺らぐピアノやハンドドラム、漂う鳥のさえずり、つぶやかれる声、爪弾かれるストリングス系の音など、様々な要素がビート上へ散りばめられている。3分が経過すると、グルーヴは勢いを増し、混沌とした展開に秩序をもたらそうと堅牢なコードが鳴らされる。しかし、しばらくするとコードは鳴りやみ、めまいを誘発する逆再生ドラムが数小節挟まれることで、トラックは再び最初の不協和音による混沌へ回帰する。 Bサイドはさらに奇抜だ。"Burrow"と"The Old Man"はセピア色の奇妙なピアノトラックとなっている。"Burrow"は誰もいないコンサートホールで演奏される厳粛で簡素なセリエル作品といった印象で、一方の"The Old Man"は奇妙なドラムロールが小刻みに重ね合わされる巧妙なトラックだ。Hayashiの制作する良作ではアイデアがもっと高密度で詰め込まれるが、今回のように隙間を多くとったトラックも他では聞くことのできないサウンドだ。
  • Tracklist
      A1 Agent Dissolving Device B1 Burrow B2 The Old Man