The Labyrinth 2019

  • 大型台風でさえも、崇拝される日本のテクノフェスティバルを止めることはできなかった。
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  • 今年4月に、MindgamesがThe Labyrinthの開催日程を9月から10月に変更すると発表した時、これで台風の影響が最小限に抑えらえるだろうと期待の声が広がった。しかし皮肉にも今年の開催は台風19号「ハギビス」の日本上陸と重なり、主催陣は初日土曜日の開催中止を余儀なくされた。大自然の中でこだわり抜かれたプログラミングを体験できることで知られるこの日本のフェスティバルは、結果的に数組のアーティストがラインナップから削られた、短縮された2日間のスケジュールで続行することを決定した。嵐が過ぎ去った数時間後の日曜の午後、約2,000人の熱烈な参加者たちが、フェスティバルの新たな会場である群馬県水上・宝台樹キャンプ場へ足を踏み入れた。 オーガナイズ側の調整や、シャトルバスで向かう険しい道中、そして過ぎ去った台風の深刻さ(前日にはなんと竜巻と地震も起きていた)をよそに、皆は落ち着いた様子だった。会場に到着すると、すぐに三角形のアーチ道のアートインスタレーションが私たちを迎え入れてくれた。樺の木の林を抜けると、屋台が並んだ小道へと続き、そこはこの一時的な村のメインストリートのようだった。道の終わりにはカーニバルのようなデコレーションが施されており、その先にダンスフロアが広がっていた。日本の北アルプスからそう遠くはない、緑豊かな山々の麓にある芝生で覆われた台地だ。 渦巻く竹でできたオブジェクトとティピー、そして高くそびえ立つFunktion-Oneのスピーカーで構成されたフェスティバル唯一のステージは、地平線を背に空に立ち並ぶ山々の風景と同じくらい印象的であった。Blind Observatoryによる穏やかなオープニングトラックの数々は、SandrienのBPM125前後のセットに気持ちよく繋がっていった。彼女以外では唯一の女性出演者だったGrand Riverは明白にも、今回の短縮されたスケジュールによってBatu、The Transcendence Orchestra、Hiyoshiと共に出演の機会は訪れなかった。
    Hiyoshiのほか、長年のレジデントであるSOが今年は運営に専念するために出演が見送られたことから、ラインナップの中で日本人アーティストはDJ Nobuひとりとなった。 樹々の影の後ろに美しい月が浮かび上がる中、Nobuは間違いなくこの夜の極め付けとなったパフォーマンスを披露。彼はオープニングとピークタイムのスロットの橋渡しを完ぺきにしてみせた。巧みに緊張感を作り上げていき、アーティストとクラウドの間にはっきりとしたシナジーを生み出したのだ。ピーク時には、Plastikman”Helikopter"の何かのヴァージョンに似たトラックが、一瞬にしてフロアに熱狂を巻き起こしていた。そしてSteve Bicknellがテクノの捻れたストレインと激しいキックドラムで後に続いたが、この自然の環境にはあまりそぐわないように感じた(今回のスケジュールの変更がその原因であるかもしれないが)。 セットの合間に、私はダンスフロアにいる時と同じくらい森の中でも友情を築いた。地元の日本人だけではなく、ミャンマーやフランス、オーストラリアから訪れた人たちと、共用の焚き火を囲みながら会話を楽しんだ。その後フロアに戻りSurgeonの探索的なライヴセットを聴いた。それは必ずしも完全にまとまりがあったわけではないが、とは言っても極めて強烈な内容で、最近RAで公開した彼のインタビューにも説明があるように、彼のプロダクションに対する精神と非常に同調しているように思えた。ステージの反対側に立つ樹々が紫色の光に照らし出される中、ザラついたテクスチャときらめくハープのようなアルペジオ奏法が際立つアンビエントで完璧なクローズを迎えた。そしてコンポーザーのJonathan Fitoussiが、まるで星を再現したかのような、キラキラ輝く音の連なりの魅力的なライブパフォーマンスで、この夜を締めくくった。 2日目の朝は早く、午前8時30分にSteve Goodによるライヴでスタート。その後レジデントのDonato Dozzyが、待望の貴重なライヴセットで登場した。まばらなパーカッションが、精巧に調整されたシステムから漂い、折り重なった有機体へと成長していく。Dozzyが最後から2番目にかけた、Bee Maskの"Vaporware”リミックスの別ヴァージョンは、昨年Nobuがプレイしており、それはLabyrinthが特別たる所以である、包括的な対話の感覚と芸術的なやりとりを助長していた。皆はDozzyの最後の1曲を目を閉じながら聴いていた。それはアースィーかつ極めて優美な、フルートの音色が響くチャントだった。
    その後、大雨が降り始めた。土砂降りになってきたので、私は鶏白湯スープで身体を温めてから最後のダンスへと向かった。この週末を通して、クラウドは礼儀正しく、しっかりとこの空間を認識していた。日曜で最も荒々しいセットのひとつだった、Eric Cloutierのプレイ中でさえも。このベルリン拠点のDJはハウスやミニマル・テクノ、ねじくれたアシッドなどを行き来し、Christina Chatfieldの“Black Hole”を投下した瞬間、ダンスフロアは爆発。この週末の最後のアクト、Peter Van Hoesenを迎える頃には、皆の準備が整っていた。彼は泥だらけのダンスフロアをソリッドかつヒプノティックなテクノで引き裂き、その後予想外のブレイクビート・トラックに切り替え、より流動的なジャンル間の動きを生んだ。そして彼が自身のトラック"Trim The Facts”をかけると皆は我を失い、絶え間ない雨にも関わらず最後までフロアに縛り付けられていた。 会場を後にする途中、私は暖を取る為にとあるお店のテントへ飛び込み、生姜茶をすすりながらオラクルカードを引いてみた。カードに書かれていた言葉は、「信念と降伏の気持ちを持って」。地球上で最も豊かな野外フェスティバルのひとつを分かち合う為に、日本の大自然を喜んで受け入れた全ての人たち—The Labyrinthのオーガナイザー、アーティスト、参加者が見せた信念を、私に再認識させてくれた。 Photo credits / Kaz Kimishita - All except Teepees At Night Brandon Brink - Teepees At Night
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