MasterSounds - Radius 2

  • Published
    12 May 2017
  • Released
    November 2016
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  • エレクトロニック・ミュージックの歴史の中で生み出されてきた他のアーティファクトと同様、ロータリーミキサーは与えられた高評価の犠牲になっている。ロータリーミキサーは大量生産されているモダンなDJミキサーのコンシューマーモデルを遥かに凌ぐクオリティを備えている。優秀なパーツ類で組まれているため、当然ながら平均的なDJミキサーよりも優れたサウンドを誇り、また、DJカルチャーの熱狂的なファンの一部にとっては、1970年代と1980年代に活躍したアンタッチャブルなパイオニアたちによって使用されたアイコニックな機材、正史の中に組み込まれる逸品として扱われている。また、最近のロータリーミキサーは、ブティック(小企業)形式で台数限定の高級品として生産されているという特徴もあり、フェティッシュなアイテムとして扱われている。要するに、多大な影響力を持つ一部のDJが使用機材としてリクエストするかもしれないが、その他の人にとってロータリーミキサーは必要ない。自分のセンスの良さをアピールするためのもので、ミックススタイルも非常に限定される。このような存在に懐疑的な目を向けるのは納得できる話だ。 しかし、ロータリーミキサーはモジュラーシンセと同じく “エリート” 機材の枠内に組み込まれているとはいえ、このシーンを構成しているのは、ただ自分が好きなことをやっているだけの熱心なエンジニアたちの集まりで、彼らは自分、そして他の数人をハッピーにしてくれる楽器や機材を組み立てているだけだ。Floating Pointsはロータリーミキサーを「パーソナルな機材」と表現している。ロータリーミキサーは価格を見るたびに資本主義を呪いたくなる機材なのかもしれないが、絶対に必要な機材ではない。そして、ロータリーミキサーの製造に乗り出している複合企業も存在するが、この機材を製造している企業の多くは、小さな利益を生み出すために働いているほんの数人で構成されている。しかしここ数年は、モジュラーシンセシーンと同じく、ロータリーミキサーも新製品が増えてきている。E&S、Condesa、Isonoe、Alpha Recording System、Superstereo、Rane、Varia Instruments、Meza Studios、Can Electric、そして開祖のBozakさえも、垂涎ものの新型ロータリーミキサーを投入している。そして、今回このリストに新たに加わったのがMasterSoundsだ。 Radius 2は、MasterSoundsの創設者Ryan ShawとXoneやRichie HawtinのPLAYdifferntlyのデザインに携わった経歴を持つミキサーデザインのMVP的な存在として知られるAndy Rigby-Jonesによるコラボレーションプロジェクトだ。MasterSoundsは、Rigby-JonesがRadius 2のデザイン・設計・そして各ユニットの出荷までを請け負っているとしている。製造方法はまさにブティックそのものだが、このミキサーがミキサーデザインの偉人のチェックを受けているという事実は、こちらに安心感を与えてくれる。Radius 2には2バージョンが存在し、ひとつはBurr-Brown製のオペアンプが搭載されているバージョンだ。そして、より高額なもうひとつは、MUSES製のオペアンプMUSES01が搭載されているバージョンで、150ポンドの価格差で高調波のひずみとノイズをやや低減することに成功している。Radius 2の筐体は小型で、トートバッグにも簡単に収まるサイズだが、がっしりとしたコントロールノブ群のおかげで堅牢な作りに感じられる。
    レイアウトは非常にシンプルで、ハイパスフィルター、トリム、AUXコントロール、そして一般的なキューとヴォリュームダイヤルを備えた2チャンネルミキサーの横に、マスターチャンネル用の3バンドEQが配置されている。尚、この3バンドはEQ / Isolatorと表示されており、アイソレーター的な幅のあるスウィープ性能とEQ的なタイトなカット性能を組み合わせたものであることを示している。VUメーターは、多くのミキサーに備わっているカラフルなゲインメーターよりも直感的なヴィジュアルフィードバックに感じられた。基本的にVUメーターはトラックのエナジーを表示するためのもので、トラックのdB値をそのまま反映しているとは限らない。もちろん、ヘッドフォンを通して聴くだけでレベルを合わせられる人もいるが、筆者にとっては、VUメーターはトラックの中のどの要素がスピーカーからの出力時に一番大きな存在感を放つのかをまた別の形で表現する指標として機能してくれる。 ロータリーミキサーは一般的にゆっくりとした操作を推奨する機材だが、Radius 2のヴォリュームダイヤルは他のノブ類よりも大きくルーズな操作感なので、必要に応じて手首を巧みに動かせば、フェーダー的な素早いアクションが実現できる。しかし、基本的にはRadius 2も周波数とヴォリュームのかすかな変化をゆっくりとした操作で楽しむ機材であることに変わりはない。通常のミックスは、トラックのヴォリュームと構成にしっかりと耳を傾けながら、ハイパスフィルターを僅かに操作するだけで行える。Radius 2のハイパスフィルターは非常に透明度が高く、Xoneのようなレゾナンスを強調するドラマティックなフィルター操作をするためのものではない。このフィルターを11時方向に合わせれば、トラックの重量感とインパクトを保ったまま最も低い帯域を消したサウンドが生み出せ、12時方向でさえも、ある程度の低域成分が保たれていることが確認できる。いかにもハイパスフィルターなサウンドになるのは2時方向を越えてからで、ここから先は高域成分だけになる。Radius 2に搭載されているこのハイパスフィルターの具体的なスペックは知らないが、テストしてみた限り、非常に滑らかなスロープになっているようだ。このハイパスフィルターを通過したサウンドは非常に美しくて透明感も高く、低域成分が完全に消えているように聴こえながらも、しっかりとした存在感が得られる瞬間も多かった。この特性は緩やかに変化するウォームミックスに最適だ。
    より大胆な操作のために存在するのが、マスターチャンネルのEQ / Isolatorだ。この3バンドはフルキルが可能で、その帯域はEQとしては広く、アイソレーターとしては狭いように感じられる。ハイパスフィルターとは異なり、低域はカットするとかなりドラマティックにフェードアウトする。また、これはプレイするトラックによって異なるが、高域を足しても嫌味がないサウンドに感じられた。たとえば、高域に7dBを足しても耳が痛くなることはない。低域をカットしながら高域をプッシュするのは楽しく、よりダイナミックなプレイが可能になる。筆者はClaude Youngのようなアイソレーター操作をほとんど行わないが、彼のような操作を好む人は、横並びのアイソレーターよりもRadius 2のような縦並びのアイソレーターを好むかもしれない。 Radius 2のラインとフォノの入力レベルはほぼ同じだ。今回のテストでは、15°以上トリムを変化させることはほとんどなかった。この特徴は、大半のミキサーより遥かに優秀と言える。また、Radius 2はヘッドルームも素晴らしい。ゲイン操作を行わずにヴァイナルサウンドをミディアムサイズのスピーカーから出力した際に、出力レベルの調整でマスターノブを9時より上に回すことはなかった。ただし、2チャンネルというコンパクトなデザインなので、ライン信号を絞るためのゲインコントロールが各チャンネルに別途用意されていても良かっただろう。とはいえ、ミックスを重ねていくうちに、そのような考えは忘却の彼方へ消えていった。ごく自然に感じられるサウンドクオリティ、シンプルなレイアウト、ビッグサイズのコントロール類、そして透明度の高いフィルターを備えているRadius 2では、瞑想的なミックス体験ができる。このロータリーミキサーは全てがゆっくりと起きていく。筆者も、フィルターの微妙な変化に満足していたためアイソレーターを触ることは殆どなく、トラックの温かさと強度を維持しながら、EQの組み合わせではなく、トラックの構成とヴォリュームでミックスを行っていった。もっとも、これこそがロータリーミキサーの特徴であり、Radius 2のような機材を買うつもりなら、このようなミックススタイルの虜になっている必要がある。 Ratings: Cost: 3.6 Versatility: 3.5 Ease of use: 4.7 Sound: 4.8
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