Keita Sano - Keita Sano

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  • Keita Sanoの初期作品が素晴らしかった理由のひとつとして、音楽スタイル面でのまとまりの無さが挙げられる。そこには目まいがするほどのテクスチャーとエネルギーが詰め込まれ、音楽スタイルがハウス、テクノ、ブレイクビーツ、ディスコなどへ急に変化する。この点が特にあてはまるのが1080pへ昨年提供した『Holding New Cards』だ。同アルバムについてJordan Rothleinは「おそらく、こうしたトラックはSanoの音楽に落ち着いた一面があることを示唆しており、今後、彼は様々なスタイルを試しながら自分にあったスタイルを探すのではなく、ひとつのスタイルの中で自分のアプローチを高めていくのではないだろうか」と記している。この予想は大方あたっていた。 昨年5月の『Holding New Cards』の発表以来、Sanoは精力的に活動しており、2枚のLPと11枚のEPをリリースし、自身の未発表音源を使った60分のミックスをRA podcastへ提供している。Sanoのスタイルがまとまってきていると感じられるときがあるとするなら、RA podcastで滾るようなハウスがミックスされたときだろう(豊かなテクスチャーはそのままに、より形の整ったグルーヴィーなトラックが使われている)。そして、彼の最新フルアルバムでも同様のサウンドを聞くことができる。自らの名前を冠してPrins ThomasのレーベルRett | Flettaから発表された同アルバムには強力なダンストラックが収録されている。 テクノ、ディスコ、アシッドを組み合わせた『Keita Sano』に収録のトラック7曲では、無邪気さと壮大さを同等に感じさせるサウンドが提示されている。本作を通じてキックは厚く打ち込まれ、ぎらぎらとしたコードが鳴らされており、カラフルでラフなムードが漂っている。今回はディスコ寄りのトラックが素晴らしい。太いベースラインときらびやかなドラムロールが起伏する"Full Of Love"では、背景部が嬉々としたシンセによって満たされている。若干ソフトな印象の祝福ムードが漂う"Honey"はアシッドフレーズからスタートした後、日中にぴったりのどっしりとしたディスコへと進行していく。"Sucker Pt. 2"ではスポットライトのようにトラック内を通過するパッドによってある種の優雅さが生まれている。 本作ではSanoのワイルドで本能的な一面もうかがえる。今回最も壮大なトラックであろう"On The Floor"は大量のサウンドが入り組むテクノトラックだが、温かみのあるサウンドと奇抜な感性で仕上げられている。パーティーから少し視点を外した"Vood"は最初の3分の1までが旋回上昇するビートレスとなっており、"Leave The Floor"はうねるアシッドベースを軸にしたいびつなトラックだ。重心低めのハウストラック"None Of Your Business"によって、褪せていく青みがかったムードと共に本作が締めくくられる。Sanoの初期作品と比較すると本作は衝動や驚きに欠けるかもしれない。とはいえ、彼は50曲近くのトラックを通じて今やおなじみの存在へと成長したのだから、Sanoの音楽の「落ち着いた一面」が一般的にいう落ち着いたものにならないのは、すでにお分かりのことだろう。
  • Tracklist
      01. Full Of Love 02. Leave The Floor 03. Honey 04. On The Floor 05. Vood 06. Sucker Pt. 2 07. None Of Your Business