Σ - Summe

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  • Σというコレクティブは世界のテクノシーンはおろか、活動拠点であるベルリンでも広く知られている訳ではない。挑戦的な5つのトラックを収録した本作はカセットテープ1本と7インチ2枚に続いて初となるプロパーなEPだが、本作によってその状況を変えられるかどうかは不明だ。Ostgut Tonが普段とは違うアーティストの楽曲を発表するために設置したサブレーベル、Untertonから本作が発表されていることは、確かにエレクトロニックミュージックシーンにおいては強力な呼び水になる。一方でΣの強烈かつアブストラクトなサウンドは決して万人受けするものではない。しかし、通常のテクノに物足りなさを感じているリスナーに彼らを認識させ始めるには「Summe」は十分に強力な1枚になるだろう。 その乾いたサウンドと効率のいい構造という面で「Summe」はMDRからハンドスタンプ仕様で発表されたNorman NodgeやMarcel Dettmannの初期作品にしっかりと通ずるものがある。しかし、収録トラックがツールのようにまとめられても、決してその通りに機能するとは限らない。強力な20秒間を提供する"Erosion"では不気味な静寂が漂っており、ノイズの鼓動がクレッシェンドから外れていったかと思うと不意に静寂に戻る。"Objectness"と"Schleife III"は比較的馴染みのある形(それぞれ、スローモーションの澱んだテクノとピークタイムの疾走トラックになっている)を取り入れているが、距離を置きたくなるレベルの恐怖と不協和でトラックが覆い尽くされている。前述の2曲の間に収められた"Schleife I"と"Schleife IX"は本作のベストトラックだ。とは言え、勇敢なDJでない限りこのトラックをプレイすることはないだろう。全速力のドラムをよく聴いてみると、4つ打ちのビートは混沌としたサウンドをほとんどまとめあげていないことが分かるはずだ。
  • Tracklist
      01. Erosion 02. Objectness 03. Schleife I 04. Schleife IX 05. Schleife III
RA