Nicuri - Outflight EP

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  • Dj Quの周辺で過去10年近く活動してきたDJ・プロデューサーによる少数集団にExchange Placeがある。Nicuriはそのメンバーの1人だ。Exchange Placeから羽ばたいたJoey Andersonは、今や自らの手でスターとしての地位をしっかりと築き上げているが、ニュージャージーのプロデューサーであるNicuriことRuben Candelarioも、その流れに続き、ダークでアブストラクトなハウスの世界に自身の表現を打ちつけようとしている。QuのStrength Musicや、続くAndersonのInimeg Recordingsから発表されたExchange Place関連の各EPに、Nicuriは登場しており、他にも2012年にはロンドンのレーベルbliqからEPをリリースしている。Strength Musicのコンピレーション『Semesters III』 のB1に収録された"Thoughts Of You"が、彼にとって大きな岐路となったようだ。このトラックは、AndersonやQuがこれまでに制作してきた作品同様にシュールだが、AndersonとQuが内省的な傾向があるのに対し、Nicuriは完全に新しい感覚を持った拡張性を持ち込んでいる。 Quの12インチやAndersonのミックスCDを既にリリースしている日本のレーベルYygrecよりお目見えとなる「Outflight EP」はNicuriの最新作だ。彼が2014年に発表した他の作品よりもさらに基本に立ち返った内容になっている。タイトル・トラック"Outflight"は、壮大にほとばしるシンセと広大なパッドを用いているが、メロディ面では、5分間全体に渡って2つのサウンドを発音しているので、変化することなく予測可能なものだ。しかし、"Ascension"ではより冒険的になっており、Exchange Placeのメンバーが得意とする邪悪な質感のコンビネーションを組み上げている。つまり、けたたましいパッド、ディレイのかかったFMシンセ、ナイフのように鋭いパーカッション、そしてメランコリックな低域だ。こうした素材を用いてNicuriが調理してきたトラックの中で、このトラックは最も革新的であるわけではないが、決して平凡であるわけでもない。 そして最後を締めくくる"On Thin Ice"は、パーカッションに焦点をあて、低域のうなり、シンバルのスライス、スネア・ロール、音程をつけた効果音といった全ての素材の動きによってトラックを重厚に仕上げている。その一方で、比較的、大人しめのシンセが上空でバランスを保っている。まとめると「Outflight EP」は、今年、これまでに発表された作品よりも、一時的な印象を与えている。そのサウンドはまるで、Nicuriがスタジオを構築している初期段階で作られたかのようだ。かといって、これは彼が注目すべき存在になってきている流れを変えるものではない。一個人として筆者は、彼の成長はエキサイティングに思っている。
  • Tracklist
      A1 Outflight B1 Ascension B2 On Thin Ice