Machinedrum - Room(s)

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  • Travis Stewartを「新人」とは呼び難い。彼はむしろ、エッジの効いたIDM感漂うアブストラクトなヒップホップアーティストとして6枚ものアルバムリリースをする、10年に及ぶ経験を積んだニューヨークのエレクトロニックシーンのベテランだ。しかし、彼のPlanet Muから発となるリリースアルバムを聴くと、どこかしら彼の再誕を思わざるをえない。 『Room(s)』は、彼の素晴らしい決意が表現された作品だ。Travisの新しい作品は、使い壊したハンマーに、ジャングルで自由奔放に動き回くらいのアドレナリンを埋め込んだものだ。エネルギッシュなスタイルに、彼の甘くて可愛いサンプルとメロディーを混ぜ合わせた、目のくらむような作品に仕上がっている。 例えば“Sacred Frequency”は、目がおかしくなるくらいビビッドなトラックで、蛍光色の持つヒステリックなイメージを持ち、容赦なしの激しいリズムが混じり合ったものにも関わらず、クライマックス部分を含め曲全体のイメージは、 華奢なつま先で歩いているようでもある。"Frequency"は、TravisがSepalcureと共に最近作り上げたエレガントなメロディーを重ね合わせたもので、オーケストラのようなメロディーの層が途方もないほどの早さで流れる。これこそが、『Room(s)』のサウンドだ。雪崩のように流れるピアノハウス "Come1"、ハンドパーカッションのサイクロン修道僧 "Youniverse"、DJ Spinn風なボーカルを使った "GBYE"。驚くほどのバリーエーションと曲のディープさが、万華鏡を見た時のような気持ちにさせてくれる。 『Room(s)』は、複雑かつ優美なパーカッションが化学実験で融合しているようなアルバムでありながら、本質を覗いてみるとポップアルバムでもある。チョッピング・サンプルを一つにまとめたものとは違い、彼によっていじられたコーラスとキャッチフレーズは泡が飛んで行くようなはつらつとしたサウンドで、何かしら最近のウェストアフリカンポップを彷彿とさせてしまう。キャッチーなボーカルが主役の "U Don't Survive" は、ダンスホールミュージックに豪華絢爛な要素を織り交ぜている。一方 "Lay Me Down"では、ボーカリストのうなり声を、優しいシルクのようなバラード調のコーラスへと仕立て上げ、 R&Bの持つ独特な劇的展開を表現している。 ポップアルバムである一方『Room(s)』は、ある意味今日のエレクトロニックミュージックシーンに混在する数多くのトレンドを一つにしたようなものだ。今まで聞いた事のない音でありながら「完璧」に近い音と言って良い。アルバムの流れも、出だしから徐々にスピードを増し、中旬の“Come 1”からゆっくりとした流れを生み、子守唄のような“Where Did We Go Wrong”に至る。そこではゆらゆらと、困っているようなボーカルが何もないスペースの中を駆け巡る。空っぽな場所を探るようなこの曲で、無秩序にも感じられる曲からしっかりとコントロールされた最高傑作へと昇り詰める。ドラマティックでありがら、非感傷的、そう、それが彼のスタイルである。感傷的な曲は、このアルバムには存在しないのだ。
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