Kazuya Nagaya & Ali Demirel
Kazuya Nagaya と Ali Demirelのオーディオヴィジュアルパフォーマンスは、WWWでの初日の夜を満員にした。パーカッショニストでアンビエントプロデューサーのNagayaは長年に渡り、特に仏教やヒンドゥー教の儀式で使われてきた楽器であるゴングやブロンズのベル、シンギングボウルを使い、聴き手を一種の内観や内省といった禅の瞑想状態へと誘ってきた。ライブではこうしたサウンドを、ラップトップから繰り出すアンビエントトラックと合わせてプレイしていた。実験映像アーティストであるDemirelのミニマリスティックなヴィジュアルもまた、それと似た対比を表現していて、水や自然の風景のフッテージが時折、微妙なカメラアングルの変化で中断されることで、人間が干渉している事を観客側に意識させるというものだった。
X-102 (Jeff Mills & Mike Banks)
何年か振りに共にライブでプレイすることになったJeff MillsとMike Banksは、1992年の記念碑的アルバム『Discovers The Rings Of Saturn』を強烈な翻案でパフォーマンスした。ステージの前に貼られた透過スクリーンに、土星と土星の衛星、そして土星リングの粗い画像が、ちょっとしたファンファーレと共に投影され、2人はその後ろに辛うじて見えている状態だった。このヴィジュアルは、MillsとBanksが"Titan”、”Pan”、”Mimas”といった名曲を次々と熱く投下していく中で、音楽が持つ生っぽいダイナミズムを反映していた。ヴィジュアルには時折、Millが特徴的な正確さでドラムマシーンを打つ様子や、Banksがさらに激しくキーボードを弾く様子など、デトロイトの2人組の現在の動向がクロースアップで一瞬だけ写し出され、その度に観客から歓声が上がっていた。彼らのエネルギーは75分間のセットの中で着実に積み重なっていた。パフォーマンスが終わると、拍手喝采が巻き起こっていた。
Hatsune Miku
『Still Be Here』は、青い髪のホログラフィックボーカロイドアイドル、初音ミクを劇的に新しいコンテクストに据えようとする学際的・クロスボーダー的マルチメディアプロジェクトだ。彼女、そして彼女のクリエーター達は、ヴァーチャルアイドルの本質について、批判的かつ内省的な方法で熟考した。ポストヒューマニズムからMarshall McLuhan、そして”Angelism(天使主義)”などあらゆるものに触れたパフォーマンスでは、Laurel Haloの楽曲にナレーションをブレンドし、ミクの甘ったるいJ-Popを、何か完全に細分化され、不安定なものへと変容させた。音楽が流れる中、ミクはメランコリックで悲しげなバレエを踊っていた。それはしばしば静観的、そして確かに心を動かされるものであり、このデジタルアバターは皮肉にも、このフェスティバルの中で人間性を最もよく表現していたものの一つだった。