Eli Keszler - Last Signs Of Speed

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  • ドラマー兼コンポーザーのEli Keszlerは音から空間を作り出す。これは比喩ではなく、彼は文字通りに音から空間を作り出すことがある。2012年の前作『Catching Net』に記録された、空間を埋めていくインスタレーションでも、そのことが示されている。Bill Kouligasによってベルリン郊外で運営されているPANから同作をリリースしたことで、Keszlerは頻繁にヨーロッパのクラブへ出演するようになった。そこで彼は、ダンスフロアを揺るがすべく設計されたサウンドシステムで自ら演奏するドラムをとどろかせた。 彼の新作『Last Signs Of Speed』に漂うムードはそのときの体験から影響を受けている。収録の12曲はいわゆるダンスミュージックではなく、意外性のあるリズムと抽象的なサウンドを多く伴った実験的なパーカッションミュージックだ。とはいえ、Keszlerによって刻まれるダビーな作品には、身体を突き動かす要素が忍ばされている。Keszlerの作る動的な楽曲のムードは、彼が頻繁にコラボレーションを行っているアーティストRashad Beckerによる泡立つ混合物のような作品と同じだ。 『Last Signs Of Speed』で最も印象的なのは、ミクロレベルに近い明瞭度だ。本作では、まるで演奏中のドラムの中にいるかのように、Keszlerによるドラムの微細な打音までもが聞こえてくる。彼のドラミングは短く鋭いサウンドで満たされており、シンセサイズされた電子音的な感覚がライブパフォーマンスに与えられる。そのため、"Sudden Laughter, Laughter Without Reason"や"The Immense Endless Belt Of Faces"といった怒涛のトラックのように、彼が素早くたくさんのドラムを叩くと、目のくらやむほどの効果が生み出される。それはまるで打楽器バージョンのストロボライトだ。 それにもかかわらず、『Last Signs Of Speed』の全トラックは音で埋め尽くされておらず広々としており、性急さはなく入念な印象だ。Keszlerによる演奏は非常に精密で、展開の少なさは時間の経過が遅く感じられるほどだ。そして、ピアノやチェロ、フィールドレコーディングなどでドラミングにアクセントが付加されることで彼の楽曲は立体的になっている。その結果生まれたのが、自ら空間を絶えず作り上げていくアルバムだ。ここには奥行きと深みのある魅力的な音空間が形作られている。
  • Tracklist
      01. Sudden Laughter, Laughter Without Reason 02. Corresponding Probably To Quanta 03. Streaming Down. Streaming Down. 04. The Immense Endless Belt Of Faces 05. No Iodine, No Breeze 06. Breaches Breaches 07. The Next Day, In The Afternoon 08. Is Strategist 09. Is Stage Director 10. Holes, Parts Missing 11. Willing To Be Open 12. Fusillade Of Colors