- どこからどう見ても、DJ Earlの『Open Your Eyes』には期待の高まる要素が数多く含まれている。Oneohtrix Point NeverことDaniel Lopatinの参加というニュースだけでも期待が膨んだが、ある意味、このアルバムはフットワークの未来全体に対する重要な提示となるような気もした。Teklifeクルーによる同名のレーベルからは故DJ Rashadが残したアーカイブスのコレクションのみがリリースされていたが(英語サイト)、本作は初めて新作を収めたフルレンクス・アルバムとなる。
たしかに、『Open Your Eyes』には確たる進化を感じさせるサウンドが収められている。本作のトラックタイトルを見るとフットワークのアルバムであることが分かる他、大部分においてシーンの伝統ともとれる表現が根強く用いられている。1曲目の"Smoking Reggie"は、草を吸うことについて語るボーカルサンプルを切り刻んだ素材とGファンクのシンセが用いられた典型的熱狂トラックとなっており、"Lotta A$$"を埋め尽くすキックドラムの猛攻もフットワークでおなじみのアレンジだ。しかし、本作は明らかに異質であり、サウンドに紛れもなく深みと輝きがある。初期フットワーク作品の即席で密室的なマスタリングと比べるとそのことがよく分かる。
この点からうかがえるのはLopatinが参加していることだ。彼は"Smoking Reggie"、"Rachett"、"Let's Work"のトラック提供者としてクレジットされている他、本作のミックスも担当している。しかし実際はそれ以外にも彼が本作に貢献しているような印象だ。"Smoking Reggie"の歪んだコードや、"Lotta A$$"の泡立つリードパート、そして、"Fukk It Up"を躍動させるLevon Vincent風のダビーなパッドなど、溢れんばかりのシンセにもLopatinの気配が感じられる。こうした要素は澄み切っており、実験的でありながら心地よさに近いものがある。
とはいえ、『Open Your Eyes』に収められているのは何よりもまずパーティーミュージックだ。"Drumatic"の強烈なサンプルには疎遠な印象を抱くかもしれないが、適正な環境の整ったダンスフロアでは破壊的な効果が確実にもたらされるだろう。同じことは"Rachett"のレイヴィーなシンセにも言える。"Smoke Dat Green"は、フットワークに影響を受けたイギリスのプロデューサーがやりそうなハーフステップ・トラックとなっており、カットアップした巧妙なブレイクが組み合わされている。しかし、どんなパーティーであろうと盛り上げそうなのは"Let's Work"だろう。本作のハイライトとなるこのトラックでは、ジャジーなコードとホーンがクラシックなボーカルと揚々とした4つ打ちに組み合わされ、シカゴハウスから始まるフットワークの進化史を美しく包括している。
Tracklist01. Smoking Reggie feat. MoonDoctor & Oneohtrix Point Never
02. Smoke Dat Green feat. Taso
03. Lotta A$$ feat. DJ Manny & DJ Taye
04. Fukk It Up feat. DJ Manny & DJ Taye
05. Rachett feat. MoonDoctor & Oneohtrix Point Never
06. Drumatic feat. MoonDoctor
07. Let's Work feat. MoonDoctor & Oneohtrix Point Never
08. All Inn feat. Suzi Analogue