Spacetravel - Dancing Therapy

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  • Luca Cara(aka Spacetravel)はBinhとVeraが手掛ける各々のレーベルからEPをリリースして以来、Perlonファミリーの一員となっている。彼の音楽スタイルの特徴はドラムの打ち込み方にあり、大抵の場合、強くスウィングしたグルーヴを感じさせる。とりわけ『Dancing Therapy』ではそれが顕著だ。16分音符刻みのサウンドがジャストのタイミングで打ち込まれ続けることは滅多になく、多くの収録曲において不規則で流動的なグルーヴの一端を担っている。もうひとつ重要な特徴として挙げられるのは、彼のトラックにはカーニバルを思わせる奇抜な性質がある点だ。例えば、半音階の忙しないメロディをビートの合間に配置する変わった嗜好によって、トラックは慎重なシャッフルグルーヴの向こう側に偏執的な熱狂を帯びることになる。さらに、対照的な音色や特異なシーケンスを通じて、明確な個性を持ったシンセパッチを奇妙に変化させるセンスも忘れてはならない。彼の作品は細かく複雑でありながら、小難しくなく踊りやすい。 CaraはPerlonのメンバーとして違和感を感じさせない。その一方で、彼の全体的な音楽観にはPerlon作品の大半に特有の整然とした輝きがない。"アナログ的"とされる不完全性や独特なクセを持つ機械らしさがCaraのトラックにはハッキリと表れている。しかし、『Dancing Therapy』で実践されたリアルタイムな制作工程はそうした機械らしさを感じさせない。むしろ、Caraは器用に機材を使いこなしており、ドラムフィル、シンセ・モジュレーション、そして、エフェクトによるアレンジによって、ペース配分とトラックの構造に対する彼のセンスが引き立てられている。 『Dancing Therapy』に収録された各トラックの素材に注目してみると、そこで多くのことが発生していると気付くだろう。"Collective Change"では、陰に潜むシンセパッチ上をホワイトノイズによるスウィングさせたハットが跳ねている。シンセパッチそのものには奇妙なフィルターでモジュレーションがかけられ、ポリリズム的な動きを生み出している。ピッチを落としてぐちゃぐちゃになった声と一緒にLFOで小刻みにうねるシンセが挿入されると、ハードコアを思わせる不穏なムードがもたらされる。しかし、ビートのシーケンスが素早く取り除かれ、浮遊感のあるパッドが鳴らされると全体的なムードが変わっていく。"Random Bass"でも同様に様々なことが進行している。トラックタイトル通りのベースラインにはリズムとして勢いがありながら、ハーモニーとして複雑さがあり、そのうねりは中盤のリードメロディとタムのフレーズによって厚みを増し、強調されている。予測不可能な動きをするパッドが慎重に用いられることで、ランダムなベース・シーケンスにメロディ要素が加わり、その結果、素材が異様に重なり合ったトラックが誕生している。 このようなトラックばかりを収めた2枚組の12インチを聞くと、少し冗長に感じる人がいるかもしれない。当然ながら12インチというフォーマットはDJを対象にしており、大きな変化をつけず、トラックごとに少しずつ異なるアングルのアプローチが取られている(明らかな例外は、意識をかき乱すエレクトロ"Strange City"だ)。しかし、独特のサウンドデザインによって、ダンスフロアから外れた面白いリスニング体験も同時に実現されている。『Dancing Therapy』にはディテールが過度に詰め込まれているにもかかわらず、それを圧倒的なグルーヴで打ち消している。そうした異質性とファンクネスのコンビネーションが本作の重要な魅力となっているのだ。
  • Tracklist
      01. Kill Divas 02. Collective Change 03. Random Bass 04. Run Way 05. Ice Man 06. Strange City 07. Abduction 130 08. Mr Waldorf