Convextion - 2845

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  • 『2845』に収録された16分間のオープニングトラック”New Horizon"では、完ぺきな調和がおとずれる瞬間がある。キックドラムは心地よく疾走し、コードは雄大な響きを聞かせ、その背後では細やかなサウンドが星図のように点在している。ありがちがクリシェが使われることのない、息をのむようなダブテクノトラックだ。このトラックを聞いていると、Convextionが少ないリリース数にもかかわらず熱心なファンを獲得している理由が分かる。 『2845』はGerard HansonによるConvextion名義のセカンドアルバムだ。プロジェクトと同名のファーストアルバムが発表されたのは2006年。同プロジェクトでは本作を含めてもこの9年で2枚の作品しかリリースされていない。今年の前半に発表された「Acido 22」(英語サイト)に収録されていたのは、Hansonの音楽を核となるビートレスの状態にまでそぎ落とした長編トラック2曲だった。同作は、Hansonのソングライティングの力強さと普遍性を示す説得力に満ちたEPとなった。リズムを取り除いても、彼の音楽は引き続き的確であり続けたのだ。『2845』ではその興奮が一切損なわれることなく、同様の魂と情熱がダンスフロアに持ち込まれている。 16分間のトラック"New Horizon"はConvextion作品の中で最も意識が惹きつけられるトラックかもしれない。ここで際立っているのは打ち込みに対する彼のユニークな才能だ。終始、ヒプノティックなシンセループが反復しているが、機材によって作られたものというよりも、小川のせせらぎのような音を聞かせている。Hansonはいつになく柔らかなタッチでエレクトロニックミュージックを制作しており、キックドラムは心地よく、そして、ゆっくりと進行するコードは薄暗く幻想的に鳴らされる。 他の収録曲の長さは約7~8分となっており、そのサウンドは全盛期のMetroplexを思わせる。リズムはスムーズに打ち込まれ、アンカーロープのように太くジグザグにうねるシンセラインと上手くまとめられている。Hansonはスペースを十分に残すことで各素材の存在感を際立たせ、職人的な集中力で楽曲を構築している。"Sea And Satellite"のベースラインは、まるでHansonの手の中で溶けているかのように、柔軟に自らの形状を変化させる。ファンキーな"Saline Moon"のパーカッションは限りなく完ぺきに近く、その巧みな構成からは、この完成度へ至るまでに要した長い年月が伝わってくる。この音楽はあまりにもきめ細やかに制作されているため、むしろ、容易く実現されているように聞こえるほどだ。 Hansonはゆっくりとリリースを重ねている(次々とエレクトロ作品(英語サイト)を発表しているE.R.P.名義を除けばの話だ)。彼のように気まぐれなリリース頻度で注目と評価を獲得するプロデューサーは数少ない。その理由はもしかすると、彼のように洗練された音楽を制作するプロデューサーが数少ないからなのかもしれない。だからこそ、2006年にConvextionが発表した同名アルバムが今でも新たなファンを獲得し、これまでと同じように新鮮で神秘的に響くのだろう。それと同じ道を本作も歩むことになりそうだ。印象に残る魅力的なSFアートワークのビンテージ性と同様、『2845』もまた普遍性を思わせるのである。
  • Tracklist
      01. New Horizon 02. Distant Transmission 03. Saline Moon 04. Tidal Friction 05. Sea And Satellite 06. Exploration 07. Flyby