Motion Graphics - Motion Graphics

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  • 「インターフェースの音やデバイスの告知音、それに家電の音だって含まれる。それが僕たちの生活と共にあるアンビエントミュージックだ」とJoe Williamsは最新アルバムの説明として語っている。KraftwerkやYellow Magic Orchestraと同じく、WilliamsもMotion Graphics名義のもとテクノロジーをポップミュージックへと変容させることで、その実態と向き合ってきた。無論、そのような存在は彼だけではない。コンテンポラリーミュージックでは、極度につながり合った現在社会がときには混沌や分裂の場として、企業のいかがわしい実験場として、もしくは、リスナーを漂わせる摩擦抵抗の無いサイバースペースとしてなど、様々な形で提示されてきた。Williamsの功績は、そうした相反する捉え方をひとつの一貫したものに折り込み、なめらかでいつまでも聞いていられるものへ変化させていることだ。 本作はWilliamsのファーストアルバムではない。2000年代中期に彼はWhite Williams名義でグラム色の強いインディ作品を制作している。彼ならではの再解釈の片鱗は近年のサイドプロジェクトでも耳にすることができる。瞑想的で奇怪なシンセミュージックを収めた、Liftedによる2015年のアルバム制作にも彼は参加している他、旧友のCo Laによるアルバムに共同制作者としてクレジットされている(その断片的なコラージュはインターネット時代に対する彼らなりの回答だ)。さらに彼はエキゾチックでレフトフィールドなジャパニーズ・ポップを詰め込んだミックステープを制作している。また、本作と並行してFuture Timesからリリースされた"Brass Mechanics"では(英語サイト)、極めてリアルなソフトウェア音源によってPhilip Glassの反復フレーズがポストヒューマンの領域へと持ち込まれた。 そうした複数の影響やアプローチが『Motion Graphics』の丁寧なバランス感覚に持ち込まれている。本作ではポップミュージックがコンピュータによる建造物として表出している。つまり、鮮烈かつ人工的で精神性を否定する空間だ。ミクロ単位の正確さでビートが刻まれ、メロディは点描画のように吹き付けられ、人工的なシンセとブラスは奇妙に曲がりくねる。収録曲を何度か聞いてみても、細かく言い表す言葉が見つからない。しかし、その濃密なアレンジはCo Laに通ずるもので決して不快ではない。すべてが神の定めに基づいて経過しているかのように("Minecraft Mosaic"でWilliamsは「天がGUIを与えたもうた」と歌っている)、そこには至福のムードが漂っている。さらに、"Lense"、"Houzzfunction"、"Mezzotint Gliss"などいくつかのトラックは、Ryuichi Sakamotoスタイルの穏やかなコード進行を中心に構築され、Williamsによる落ち着いた様子の声が軽快なテノールに乗せて不可解なメタファーを表現している。 最も興味深い展開が起こるのは本作の中盤だ。小刻みなリズムの"Anyware"や"Vistabrick"にはフットワーク的要素があるものの、リズムに焦点があてられているわけではなく、トラックはウッドウィンドやロボット声による優雅なコーラス隊によって覆われていく。"City Links"では、起伏するストリングスの向こう側で、Williamsの声がオートチューン処理されてきらめいている。人工的に澱ませた空間の中で彼は「光加速 / タイムゾーン設定 / 可搬家屋で移動」などとつぶやいている。その意味をはかりかねるかもしれないが、視点を変えると、本作を通じて沸きあがってくる感覚が見事に言葉されているようにも思えてくる。
  • Tracklist
      01. Lense 02. Airdrop 03. Houzzfunction 04. Anyware 05. Minecraft Mosaic 06. Vistabrick 07. City Links 08. Forecast 09. Mezzotint Gliss 10. SoftBank Arcade (Swiftcode Version)