Floating Points - Kuiper EP

  • Share
  • 昨年の『Elaenia』がRAの2015年ベストアルバムとして選出されるなど大成功を収めたSam Shepherdはジャズとエレクトロニカをブレンドしたライブパフォーマンスを展開し、細部まで繊細に作りこんだ音楽をメインステージのヘッドライナーとして相応しい熱気で演じている。中にはつなぎ的な楽曲もある。例えば、"Thin Air"は"Peroration Six"ほど機能的ではないだろうが、『Elaenia』のじっくりとしたペース配分により演奏面では好都合となる。『Elaenia』以降初の作品となる『Kupier』では、彼はこの点に真っ向から力強く取り組んでいるようだ。新曲が1曲と『Elaenia』にも収録されていた"For Mamish"の別バージョンを収めた本作を聞いていると、Floating PointsがDJなのかスタジオプロデューサーなのか、すぐに分からなくなってしまう。トラックはそれぞれ18分、14分と尺が長いが、『Kupier』の意図はそれだけではない。長時間をかけてゆっくりと構築されていく表題曲のアレンジや"For Mamish"のグルーヴィーなせせらぎは、Floating Pointsによる次なる展開を予告しているのかもしれない。 柔らかく快活なオリジナルバージョンをさらに控えめにアレンジしたと言える"For Mamish II"は、歪んだシンセによる突然のうねりや、主旋律を奏でるローズの知覚不可能に近い小刻みな動きなど、Shepherdと彼のバンドによって放り込まれる一見即興的な装飾音上で盛り上がりを見せる。全速力になりそうでならない、常にもたつき流れていく様には、素晴らしいセッション中盤に寄与する一種の緊張感がある。 一方、"Kuiper"は最初から軌道をはっきりと示しており、オープニングの静かな状態から一気にクレッシェンドへと高まる中で、動的なエネルギーと上昇していく流れを集めている。大まかな展開のため、同トラックを付随曲だと思うかもしれないが、Shepherdによるトラックのまとめ上げ方により、起伏のあるライブショウの中心的楽曲のようにも感じられる。意外にも終盤では、"Echoes"時代のPink Floydを超えるサイケデリックなスロージャムへと滑り込み、壮大なギターとストリングスのアレンジメントが用いられる。控えめでジャジーな音楽性を持つソロアーティストとしてのFloating Pointsしか知らない人にとって、"Kuiper"は驚きに映るだろう。しかし、彼の爆発的なライブバンドの一面を切り取ったトラックとして、この壮観なサウンドは実に的を得ている。
  • Tracklist
      A Kuiper B For Mamish II