Tom Ellis -­ From The Cabin Above The Clouds

  • Share
  • 2004年から現在までに40枚以上のEPをリリースしてきたにもかかわらず、DJ/プロデューサーのTom Ellisは、酩酊を好む熱心なDJやダンサー以外の人たちには見落とされてきた。彼はウェールズのフェスティバルFreerotationと密接な関係を持つレジデントのひとりだ。ディープハウス・シーンの重鎮であるEllisはここ数年の同シーンの浮き沈みにも動じていない。6枚目のアルバムとなる『From The Cabin Above The Clouds』では彼の刺激的なディープハウスの表現が示されている。 『From The Cabin Above The Clouds』は彼の過去作品よりも温かく内省的だ。機能性に代わり制作芸術性や雰囲気が際立っているが、収録曲の多くは適時適所でプレイされれば有用に機能する。この音楽の重要性を高めている要因のひとつは、Ellisが大部分をライブ演奏して、メロディ(それが悲しげであってもロマンティックであっても関係なく)に即時性を、そして、コードにさらなるパワーを与えていることだ。 Ellisが楽器にマイキングすることで、どのトラックにも若干の余裕が確保されている。その結果、音楽が狭い帯域に押し込まれず、広々と多元的に聞こえるようになっている。彼の技術がとりわけ効果的に表れているのが"Many Times"だ。ジャジーなドラム、サイケデリックに加工されたローズ、そして、乱雑にしたヒット音がひとつになって緩いグルーヴを紡いでいる。"Far Reach"では躍動するスネアとジャズのエッセンスを加えたパーカッションをソナー音と組み合わせてシネマティックなサウンドスケープを生んでいる。"From Across The Valley"においても、合成物と有機物が、すなわち、ライブ演奏とプログラミングが融合している。 『From The Cabin Above The Clouds』ではムードがゆっくりと変化し、極上の酩酊サウンドから、変質的で抽象的なサウンドへと移行していく。巧みな曲順によりさらなる厚みが加えられたアルバムは、過小評価されているこのアーティストに注目をもたらすはずだ。
  • Tracklist
      01. The Bored And The Lonely 02. Stranger In This Town 03. Our Moments, Too Swift 04. From Across The Valley 05. Mechanical Failures 06. Wide Open Window 07. Many Times 08. Far Reach
RA