YPY - Zurhyrethm

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  • "Zurhyrethm"は一致しない乱雑としたドラムマシン・シーケンスが重なり合ったトラックで、そのことを完ぺきに要約しているのが、一見、支離滅裂に思えるトラックタイトルだ。混沌の中でリズムを作り出す人がいるが、そうしたリズムはしっかりとした理解のもとに生まれているわけではない。Koshiro Hinoにとってカセットテープ以外のフォーマットではファーストアルバムとなる『Zurhyrethm』の1曲目として、この表題曲は大阪拠点のアーティストである彼の興味深いエレクトロニックミュージックを上手く代弁する役目も果たしている。先日のインタビューに拠れば(英語サイト)、同トラックは2012年に彼がYPYとして初めて制作したもので、トラックタイトルは、日本語で"ズレたリズム"を意味する"zure rhythm"をもじったものだそうだ。10分間に及ぶ同トラックの大半にわたって、丸い穴に四角い杭が打ち込まれたり、角が剃り落とされたり、素材が隅々で削り出されたり、正攻法では成しえない新たなアングルが見つけられたりしている。ところが、トラックが4分の3くらい進行すると、混沌がまとまり始め、グルーヴのようなものが出現してくる。 "Zurhyrethm"を聞く行為は、初めて見るMagic Eyeのポスターから隠れた絵を見つけ出そうとする行為に似ており、何度も隠れたリズムを探し当てたくなる。本作にはそうした掴みきれないものを掴むような場面が他にも用意されており(この点においては"Mild Mind Bending"がハイライトだ)、アナーキーな方向に進んでいないトラックであれば少なくともそのことが分かる。今年の『The Rusted U.F.O.』を含むYPYの過去作品では、より豊かなテクスチャーとメロディがビートに注入されていたが、『Zurhyrethm』では主にリズムの実験が行われており、ダンスフロア向けの楽曲構造よりも抽象的なリズムが重視されている。荒々しいテクノトラック"Bugs Groove"が5曲目になってようやく登場すると、同トラックの躍動する粗野なキックとけたたましいスネアが『Zurhyrethm』の中心軸として強大な重力を発しているように感じられる。 どうやら、収録された7曲は70曲に及ぶトラックから選ばれており、選曲はEM Recordsの主宰者Koki EmuraとHinoの親友であり大阪でDJとして活動するYousuke Yukimatsuのふたりだけで行われたようだ。Hinoは先述のJunoのインタビューに対し、次のように語っている。「この曲最高だと思うんだけどなって曲は見事にスルーされましたね。選曲については僕からは何も言ってないんですよ。ただ音源を送るだけ送って選ばれるっていう(中略)いつのまにか僕の作品というよりもEM Recordsの作品になっていたなって思って」。この発言の真意を推し量るのは難しいが、現在の彼のテクノに対する興味がその説明になるかもしれない。"Shadows"、"Bad Life"、"The Bended U.F.O."といった近年の作品は混じり気のない強力なダンストラックだからだ。途方に暮れる数にのぼるリズムトラックのアーカイヴとして、『Zurhyrethm』は他と置き換えることのできない特異な作品だ。しかし、テクノ・フォーマットにおけるHinoのサウンドを知っていると、彼のテクノ作品をもっと聞きたくなってしまう。
  • Tracklist
      01. Zurhyrethm 02. Mild Mind Bending 03. RIP 505 04. Gazing Beat 05. Bugs Groove 06. Doo Dah Dah 07. Dreams