DJ Metatron - 2 The Sky

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  • ダンスミュージックではよく宗教が引き合いに出されるが、DJ Metatronは「2 The Sky」にそうした要素を思う存分取り入れている。レコードスリーブにはふたつの十字架が浮かび、「癒しと団結」を求める男性の声が使われた簡素な"The Journey"や"2 The Sky"といったトラックは共同体や儀式を示唆している。このふたつはクラブカルチャーと宗教に共通する基本要素だ。Traumprinzとしても知られるMetatronの音楽に関して言えば、この点が可能な限り平易に表現されている。「2 The Sky」の収録曲はとてもシンプルで、ダンスミュージックにおけるレイヴ時代の理想に直結する、トランスやハードコアのようなスタイルと恍惚のメロディが取り入れられている。「U'll Be The King Of The Stars」(英語サイト)がその時代に対する広義のトリビュートのように感じられるとするなら、本作はさらに普遍的な要素を捉えていると言える。 本作の焦点がどこにあてられているのか正確に特定するのは難しいが、それがあるフィーリングであることは確かだ。"2 The Sky"ではきらめくピアノが不規則に降り注ぎ、それ以外の要素は正反対の方向に進んでいく。ゴスペルシンガーによるGメジャーのアップリフティングな懇願が今にも音程を外しそうにシンセの音色上で揺らいでいる。このトラックは本作で最も陽気でありながら、不思議と繊細な仕上がりだ。こうした多義性は本作の空間使いからも生じており、"As I Get Insane"ではとりわけ巨大な空間が広がっている。じっくりと起伏するシンセはJoy DivisionのプロデューサーMartin Hannettのテクニックを思わせる(彼はよく各ドラム音を分けて録音していた)。 「2 The Sky」では、脳裏に残る雰囲気を生み出すHannettのアプローチからの影響も感じられるが、彼のような冷ややかさとは無縁だ。例えば"2 Bad"の包み込むようなボーカルは、"2 The Sky"の慎重な高揚と対を成す癒し要素となっている。2015年のRA Poll: Top mixesで1位を獲得したDJ Metatronによる『This Is Not』で初めて登場した"2 Bad"は、切れのいい硬質なパーカッションに颯爽としたホーンと手打ちしたような連続ブリープを組み合わせている。素晴らしいサウンドであるだけでなく、音楽に対する誠意に満ちていることが分かる。 音色のコントラストや喚起される情感など「2 The Sky」の多くの要素は様々に解釈可能だ。そうした不確定性が本作の作品価値を高めている。"The Journey (Skid)"ではJake Gyllenhaalが独話でこの点に触れている。15年前に出演したカルト映画『Donnie Darko』を表現する言葉を探しながら、彼は次のように語る。「あの映画に何かを強いられることがあるとするなら、それは映画に対する自分なりの結論を求められることだ。人によって異なる体験が得られる映画なんだ」。ここでは"人によって異なる"というのが重要だ。「2 The Sky」では信仰が説かれていると同時に、それをリスナーに課すことはない。そんな必要はないからだ。
  • Tracklist
      A1 As I Get Insane A2 Traumprinz - 2 The Sky (Metatron's What If There's No End And No Beginning Mix) B1 The Journey (Skid) B2 Traumprinz - 2 Bad (Metatron's What If Madness Is Our Only Relief Mix)