Richard Davis - Methane Sea

  • Share
  • かつてJuan AtkinsはCybotronのパートナーであるRichard Davisを「真の一匹オオカミだ」と称していた(英語サイト)。Davis本人の言葉を借りるならば、彼は「ベトナムの地獄」を体験し、Cybotronとしていくばくかの成功を収めた後、退役軍人療養所で貧困に陥った。彼が16歳だった1967年にデトロイト暴動を目の当たりにし、海兵隊の訓練中に(英語サイト)無許可で離隊したが、Martin Luther King Jrの暗殺を耳にして隊に復帰し、18歳になると即座に戦場に送り込まれた。帰国後、彼は退役一時金でARPのAxxeを購入し、エレクトロニックミュージックに打ち込むようになった。 「Methane Sea」が録音されたのはジョーンズタウン集団自殺事件の2日後のことだった。ディープスペースで自分の種子を植え付け、子孫を超人類へと進化させて宇宙を支配することについてDavisが語っている点は軽視できない。Conrad SchnitzlerがFluxusよりもFunkadelicに傾倒していたなら、「Methane Sea」のような作品を制作していたかもしれないが、ドイツ人である彼とは異なり、Davisがここで狙いにしているのは明示的な物語だ。彼のサウンドには心象風景を強力に喚起する機能が備わっており、Davisが自分の頬を撫でる風を「200度の口づけ」だと表現する場面では、灼け付くように弾けるフィルター音がそのイメージを強調している。「陽子爆弾!」という叫びと共にピークを迎えると、トラックは原子力シンセによる大爆発によって破砕する。 「Methane Sea」を古めかしく聞こえるという人がいるかもしれないが、比較的控えめに響く不気味でポリティカルな音楽を最も現代的に試みようとする危険な狙いが作品の中核部分に潜んでいる。その発端をDavisのトラウマ体験として片づけてしまいたくなるところだが、そうするとAtkinsのバイオグラフィーの一端を担う以上の存在である彼から主体性を奪ってしまうことになるだろう。
  • Tracklist
      A Methane Sea - Prelude B Methane Sea - Aftermath