Daze Maxim - Rising / Falling

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  • Daze MaximことMarkus Manowkiが、ディストリビューターwordandsoundのセールスマネジャーを務めていたJan Krügerと共にレーベルHello?Repeatを始めたのは2005年のこと。しかし、Manowkiのキャリアは90年代にまで遡り、HardfloorのOliver Bondzioが運営していたJakpotからデビューを飾って以降、ボトムの効いたビートにファニーな素材を散りばめたトラックをリリースしていた。その後、Bondzioと設立したSerial Killers Haircutを経て現在へ至るまでの間、彼のスタイルは徐々に変化し、音そのものに備わっている響きを最大限に引き出す、より繊細なミックス処理が行われるようになった。そしてHello?Repeatからの諸作品に代表されるように、Manowkiはトラックをグルーヴの芯となる部分にまで削ぎ落し、ふっと滲み出てくるようなムードを忍ばせることで、ともすれば無味乾燥に陥りがちなミニマルサウンドを極めて豊かでエレガントな表現にまで高めてきた。過去の作品を聞き返すと、そのどれもがダンスフロアでの体験に由来していることが分かるが、彼はDJを始めた15歳のときから、ジャズにも強い興味を示していた。2002年にKrügerと共に発表した「Cassis」には、ジャズのエッセンスを多分に盛り込んだ” Slow Rounded”が収録されている(同作はKrügerによる数少ないリリースのひとつだ)。 2000年の『Same Place The Bot Got Smashed』以来となるセカンドアルバム『Rising/Falling』を聞くと、彼のそうした一面がこれまで以上に打ち出されていることが分かる。トランペット奏者Slothがベルリン滞在中に共同で制作された”Diachronic ”では、キーやテンポなどを事前に決めずに完全インプロヴィゼーションで演奏が行われ、ポストプロダクションも一切施されていない。静謐とした空間に柔らかく揺らぎながら減衰していくパッドと電子音が奏でられ、少し擦れたトランペットが生成りの音色を響かせている。レーベルメイトであるBruno Pronsatoの紹介で知り合ったベーシストYonatan Liviが参加した”Anomaly Of A Poetry”では、ベースの帯域に被らないようにビートとウワものが組まれていることで、Liviの演奏による細やかなタッチが際立っている。このような楽器演奏を交えたセッションを行うのはMakowskiにとって目新しいことではなく、彼はキャリア初期から多くのミュージシャンたちとスタジオに入ってきた他、自身でもサックスやピアノを演奏している。モジュラーシンセを導入した”Happy Collapse”や、延々聞き続けられる強度を持ったループを土台にした端正なミニマルハウス” Inbetween”、そして、本作の最後を締めくくる叙情的な”Soon”で彼の演奏を聞くことができる。 本作には、ボイスサンプルと細かな素材をファンキーに混ぜ込んだ”Shifty Limbs”や、硬質なキックにざらついたベースラインを絡ませた”Darkness In Your Pocket”など、従来のDaze Maximらしさを感じさせるタイトなダンストラックが収録されている一方で、バックビートにベースを配置して浮遊感を演出している”On The Way Back”や、シンコペーションさせたキックで坦々と拍子を刻む”The You Show”では、これまでの音楽性を軸に拡張していこうとするMakowskiの姿がうかがえる。Bruno Pronsatoをフィーチャーした“Ghost Of A Chance”における、様々な電子音と素材を使ったセッション感溢れるアレンジもその一端だろう。 Makowskiは楽器演奏にともなうミュージシャンシップとダンスミュージック/エレクトロニックミュージックをこれまで納得いくかたちでまとめ上げられなかったようだ(英語サイト)。しかし、ダンスミュージックに限定されない音楽活動をもとに結実した『Rising/Falling』は、その突破口を見出すものであり、次のステージに飛び込んだ彼の第一歩となるアルバムだ。本作をきっかけに新たな可能性を感じているというMakowskiの今後にさらなる期待が高まる。
  • Tracklist
      01 Diachronic (feat. Sloth) 02 Happy Collapse 03 Melted Talk 04 On The Way Back 05 Inbetween 06 Darkness In Your Pocket 07 Shifty Limbs 08 Ghost Of A Chance (feat. Bruno Pronsato) 09 The You Show 10 Anomaly Of A Poetry (feat. Yonatan Levi) 11 Soon