Arthur Boto Conley's Music Workshop Presents Don't DJ / Metasepia

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  • Thomas BaldischwylerによるレーベルTravel By GoodsはArthur Boto Conley’s Music Workshopと題した作品をリリースしている。同シリーズ第5弾のテーマになっているのは、最大公約数を求める定理ユークリッドの互除法をベースに大学教授Godfried Toussaintが提唱したユークリッドリズムだ。1周期を16分割して、そこに4個の音と12個の無音部を均等に配置する場合、12と4の最大公約数は4のため、[ x...x…x…x…]という[ x… ]が4個のリズムパターンができる([ x ]が有音部、[ . ]が無音部)。最大公約数が1になる場合(例えば、7個の音と9個の無音部を均等に配置する場合)、 [ x..x.x.x..x.x.x. ]という配置になるのだが、次のように求められる。 9 ÷ 7 = 1 × 7 + 2 [ xxxxxxx……… ] ⇒ [ x. ] [ x. ] [ x. ] [ x. ] [ x. ] [ x. ] [ x. ][ . ][ . ] 7 ÷ 2 = 3 × 2 + 1 [ x. ] [ x. ] [ x. ] [ x. ] [ x. ] [ x. ] [ x. ][ . ][ . ] ⇒ [ x..x.x. ][x..x.x.][x. ] したがって [ x..x.x.x..x.x.x. ] となる ふたつの数字を変更すれば世界中に存在する伝統的なリズムパターンをほぼすべてカバーできるとされ(スウィングなどの揺らぎは含まれていない)、アフリカやラテンアメリカの複雑なリズムを生成するためにWouter Hisschemöllerが開発したソフトウェアも複数のユークリッドリズムをベースにしている。そしてそのソフトウェアを数年前から使用し続けているのが本作を手掛けたDon’t DJことFlorian Meyerだ(本作にはふたりの対談を書き起こした文章が付随している)。デビューから一貫して彼が発表し続けているポリリズミックな作風は本作でも健在で、”Eylotte”では鍵盤打楽器系素材によるメロディ兼リズム、キック、シェイカーが一体になることで生まれるグルーヴにアフリカンボイスのサンプルを組み合わせている。”Krickel Krackel”も基本的なアイデアは同じだが、BPMが120まで速くなっている他、歪んだノイズがうねりながら絶妙なアクセントとなるミニマルな展開を作っており、よりフロア向きな仕上がりだ。”Kurische Nehrung”は本作で異色を放っており、前述のソフトウェアが使われていない。リズムというよりも軋む電子音や澱んだ低音がループすることでうねりを生んでいる。いずれのトラックもミニマルの陶酔性に焦点があてられており、レフトフィールドなハメを好む人におすすめだ。
  • Tracklist
      A Eylotte B1 Krickel Krackel B2 Kurische Nehrung
RA