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CTM 2016
Published
Apr 11, 2016
Words
Bianca Giulione
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ベルリンのCTMは、サウンドのイノベーションを第一に考えているアーティスト達を紹介する、シーンにおいて最も面白いエレクトロニックミュージックとアートのフェスティバルの1つである。キュレーター形式のプログラムは1つのテーマを中心に大まかに組まれており、今年のテーマはNew Geographies(新たな地形)だった。キュレーターの1人Rabih Beaini(素晴らしい人選だ)は、次のようにコメントした。「音的にだけではなく、精神的に境界線という概念を捨てましょう」。1月29日から2月7日までの10日間に渡り開催された今年のCTMは、エクスペリメンタルという分野における真の探検のように感じられ、境界線と言えば、正しいパスやチケットを持っているかどうか、あるいは良いスポットを確保する為に早い時間に会場入りしたかどうかという、フィジカルなもの以外存在しなかった。 フェスティバルにおいて、女性、あるいはストレートな白人の男性ではないアーティストがラインナップされるとそれだけで分類されたり特別扱いされることはよくある。しかし、CTMは少し違う。アメリカの実験音楽シーンにおける重要人物であるPauline Oliverosは今回4度目の出演となったほか、木曜日の夜にはPanorama Barを会場に、出演者全員が女性アーティストのイベントが開催され、更にはBreadwomanのAnna Homlerもカムバックを果たした。また、今回のフェスティバルで最も話題を呼んでいたプログラムの1つは、Laurel Haloが音楽を担当した、日本発のバーチャル・ポップスター初音ミクによるパフォーマンスだった。ラインナップに目を通しただけでも、たくさんの女性アーティストとたくさんの人種を見られることが分かっていたが、それぞれのイベントが上手くキュレートされていたこともまた素晴らしかった。
コラボレーションは、常にCTMの中心的な存在だ。東京拠点のノイズ作曲家 灰野敬二とギタリストの内橋和久は、インドネシア出身のデュオSenyawaとタッグを組み、ヴォーカルのコードとギターストリングスがミステリアスに反響するジャパニーズ・ジャワニーズ・ジャムセッションを敢行。ピーク時の彼らの演奏は、不協和音とも美しい旋律とも感じられた。Coordinatesシリーズとして行なわれたパフォーマンスの1つでは、ロシア人デュオLove Cultによる催眠的シューゲイズのライブと、Alina Filippovaによる映像が融合。デュオによる、カットアップ・ヴォーカルと律動するベースで構成されたダークでドリーミーなシンセシスは、Filippovaが映し出すロシアの若者たちの姿にとって最高のサウンドトラックとなった。10代の少女が1分間ほど野原で踊り、その後は手足を引きずりながら泥の中を移動する、といった内容のその映像は、ライブの音と同じベクトルの陶酔感をもたらした。この、とりとめのない陳腐さの中に垣間みられる美の観念は、ButtechnoのライブA/Vセットにも感じられた。ぼんやりと映し出されたヴィジュアルには、ロシアのコンクリート造のアパートと、スキーマスクを着用したミステリアスな人物が映し出され、その人物は最終的に、洞窟の中でAKAIのサンプラーでジャムするButtecnho自身の姿に変化した。
バーチャル・ポップスター初音ミクをフィーチャーしたパフォーマンス、Still Be Hereは、CTMというフェスティバルを凝縮したような内容。Haloが念入りに音楽を構成した、このよくできたミドル・ブロウな体験は、音、ヴィジュアル、バーチャルにおける不気味の谷を追求し、周囲に存在するハイプを脱却するようなパフォーマンスであった。しかし、Floating Pointsを含むその他のパフォーマンスは、期待通りの内容とは言えなかった。Sam Shepherdはジャズ好きの中年男性たちの心を掴むことに成功し、そのファン達は次の曲のリフが鳴る度に歓声を上げた。しかし筆者にはどうしてもそのアンサンブルが、最高級のアナログシンセサイザーを加えただけの、RadioheadとPink Floydのミックスにしか聴こえなかったのだ。満足のいかなかった筆者はFloating Pointsのステージを離れ、Beatrice Dillonによるオープニングセットを聴く為にWatergateへと移動した。最初のうちは熱心なファンが数人踊っているだけだったが、彼女がLaurel Haloの"Situation"をプレイした後、フロアは大きく盛り上がった。 その他にも、フェスティバル開催中は狂気じみたダンスフロアでの瞬間が数多く生まれ、特にプログラム前半でのBerghainとPanorama Barは、そういった瞬間の連発であった。木曜日の夜に登場したネパールとチベットをルーツに持つプロデューサーAïsha Deviは、ダンサーや、Tianzhuo Chenによる非常にカラフルなヴィジュアルを携え、唸るベースの上にエネルギッシュなヴォーカルを乗せた。次に登場したのはアメリカ人ラッパーのLe1f。流ちょうなヴォーカルとキャッチーなフックは、Berghainの多くのクラウドを踊らせた。この日の上階のPanorama Barは、フェスのその他のプログラムと比べるといつものPanorama Barに近い音楽が鳴っていたが、それでも普段よりはサブベースが強く、4つ打ちのビーツは少なかった。Jlinは、彼女ならではのサンプリングに頼らない素晴らしいライブミックスを披露し、筆者はその場を離れることができなかった。エナジーに溢れ、クラウドの盛り上がりも最高潮に達し、Jlinは大きな笑顔を浮かべ、踊りながらパフォーマンスを続けた。会場が木曜日の午前3時半のPanorama Barや、金曜夕方のアートミュージアム、あるいは日曜夜のWatergateだろうが、今年のCTMは、我々があてもなく彷徨うことのできる、広大な音のジオグラフィーを実現してみせた。この幅広く、革新的なラインナップが特殊扱いされず、より多くのフェスティバルやクラブのプロモーターがCTMに続いてくれることを筆者は願いたい。
Photo credit: Camille Blake
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