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  • 11年以上に渡ってLeif Knowlesは25枚のEPと2枚のアルバムを制作してきた。そのほとんどが傑作であるにも関わらず、彼は決して広く知られているわけではない。Knowlesや彼の仲間たちは、毎年、Freerotation Festivalでピークを迎えるウェールズのシーンが産んだアーティストだ。技巧性を重んじる控えめな性格をした彼らは、ハウスミュージックの難解ながらも伝統的な本質(ディープさ、など)を好み、流行を意図的に避けている。『Taraxacum』は突然生まれた良作というより、何年にも及ぶ制作経験が結実したものだ。 典型的な4つ打ちのドラムパターンが用いられているのは『Taraxacum』のオープニングを飾る"Taraxacum"のみだ。細かなサウンドが降り注ぐ同トラックはダビーな雰囲気を生み出した後、奇抜に入り組んだパターンへとリスナーを導いていく。続く"Painted Cakes Do Not Satisfy Hunger"では、シェイカー、フルート、ハンドパーカッション、そして、つんのめるキックからなる、美しく混然としたポリリズムが形成されると、突如ベースギターの巧みな演奏に焦点があてられる。"Untitled"は、微かなパーカッション以外の要素が取り除かれているにも関わらず、非常にリズミカルだ。このトラックは『Taraxacum』全体に通ずる堅苦しくない特性を最もハッキリと示している例だ。収録曲の多くは、展開をして、リスナーを惹き込み、不意に終了する。それはまるで絶対に長居をしない友人のようだ。 Knowlesはドラマティックな表現をするタイプではないが、本作では複数の要素からなる世界を創造している。例えば"Air, Light, Time, Space"では、ふたつの音高で鳴らされるピアノと、2ステップのパターンで打ち込まれる不安定なキックが固定的なリズム要素として用いられており、そうしたシンプルな要素の周りには、爪弾かれる少し枯れたコードが目まぐるしく出現する。さらに印象的なのが"An Elephant Madness"だ。Morr Musicスタイルのメロディで表現される楽観的な感覚が、大型容器さえガタガタと揺るがしそうなローエンドと混ざり合っていく。その後、不安感を煽るパーカッシブなコードがトラックを覆い尽くす様は、フェーズがずれていくSteve Reichの反復パターンを思わせる。 Leifは、希望に満ちたメロディ、ダブの雰囲気、UKスタイルの突発的なリズムという三拍子が揃った珍しい存在だ。彼のアプローチが余りにも燦然と音楽を輝かせているため、批評的な見方をするのが困難だ。小手先だけではない彼の制作スタイルは斬新であり、そこから、2013年の"Circumstance 4"や、2015年の"Life Through Analogies"といった長く魅力を放ち続けるトラックが生み出されている。そして今回生まれたのが『Taraxacum』だ。空間的なハウスの定義を密やかに押し広げつつも、このジャンルに不可欠なムードを引き続き保っている作品である。このようなディープハウス作品と出くわすことは滅多にないだろう。
  • Tracklist
      A1 Taraxacum A2 Painted Cakes Do Not Satisfy Hunger A3 Untitled B1 Tuesday Nothing B2 Air, Light, Time, Space C1 An Elephant Madness C2 October Light D1 Decision, Assumption D2 Anachronistic feat. Duckett