Regis - Manbait

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  • 10月上旬に公表され、今や多くの人に知れ渡った辛辣なメール(英語サイト)において、ポストパンクのアイコンであるSteve Albiniは、エレクトロニックミュージックが「急進的で異質だった」のは、Kraftwerk、D.A.F.、Cabaret Voltaireといったバンドの時代だけで、それ以降は「ダンス/クラブミュージック」がそのアイデアを勝手に借用している、と語っていた。このメールが支離滅裂に思えた人もいるかもしれないが、そこには重大な真実が隠されていた。クラブカルチャー以前のエレクトロニックミュージックはとても異質で、そうした時代を好んでいるのはAlbiniだけではない。Regisとして知られるテクノアーティスト、Karl O'Connorを例に挙げてみよう。彼はかつてThe Quietusに対し、次のように語っている(英語サイト)。「80年代、エレクトロニックミュージックは本当に洗練されていた。でも、それからは単に少し安っぽい印象になった。ダンガリーズとか、ポニーテールの髪形をした男とか、正直、俺はかなり腹が立ったよ」。彼はアシッドハウス黎明期のレイヴァーを指して「俺がFad Gadgetのコンサートから家に帰っていた途中に、急に襲ってきたヤツらと同類」であるとさえ語っていた。 過去20年間をクラブでのプレイに費やしてきた人物であることを考えると、こうした発言を真面目に受け止めるのは少し難しいが、O'Connorによる一連の作品を見れば、それが冗談ではないことが分かる。彼のテクノ作品が持つ冗談めいたニヒリズムから、彼がFemaleと共に運営するレーベルDownwardsでの精工なまでに殺伐としたレコード、そして、British Murder Boysなどのネーミングセンスに至るまで、彼は常にポストパンクをルーツに持つダークな初期エレクトロニックミュージックに忠誠を誓ってきた。それは彼のスタイルにとって、ひいては、彼がその誕生に貢献した「バーミンバムサウンド」にとって決定的な要素ではあるが、ここ数年間は、いつになくさらに焦点があてられるようになっている。彼がティーンネイジャーの時に演奏していたシンセパンクバンドによる楽曲名から名前を取った『Manbait』は(その楽曲も今回リミックスされている)、O'Connor作品のこうした一面を記録している。 『Manbait』には、2010年から現在に至るまでにリリースされたトラックがまとめられている。この時期は、O'ConnorがBlackest Ever Blackと仕事をする機会が増え、彼がFunction、Female、Silent Servantと結成したコレクティブであるSandwell Districtが徐々に消滅していった頃だ。"Blood Witness"や"Blinding Horses"といったRegisによるオリジナル作品と一緒に、Vatican Shadow、Raime、Factory Records一派のIke Yardといったアーティストたちをリミックスした作品や、O'Connorがプロデュースに助力したTropic Of Cancerの"Plant Lilies At My Head"の"Alternate Version"が収録されている。 字面だけでは不揃いに映るかもしれないが、実際の『Manbait』のまとまり具合は抜群だ。全編を通じて、そのサウンドは艶やかで、輪郭がハッキリとしており、そして、空間的だ。Sandwell Districtよりもバランスが崩され、『Gymnastics』や『Penetration』といったRegisのクラシック作品における高濃度の残虐性とはかけ離れている。スタンダードなテクノの鼓動を感じることは、ほとんど無い。本作でフロアを盛り上げそうなトラックは、主に"Blood Witness"の別バージョンふたつだろう。Vatican Shadow "Church Of All Images"のリミックスにおけるドラムの忍ばせ方や、CUB "C U 1"における驚異的なまでに豪快なグルーヴも要チェックだ。 本作には刺激的なアンビエントサウンドも含まれている。Dalhous "He Was Human & Belonged With Humans"のリミックスでは、原曲を削ぎ落して、実際には存在しないに等しいにも関わらず、強烈なビジュアルを喚起させるものを生み出している。"Blinding Horse"の"Stableboy Version"では、原曲の中身を取り除き、不気味な感覚を持つスケールを喚起させるのに十分なディテールだけを残している。"Blinding Horses (Original 12-Inch Mix)"におけるファズギターや、Raime "The Foundry"のリミックスによる至極のキーボードなどのように、頭上彼方に上昇していくサウンドによって、本作で最も重厚なビートさえも中和されている。本作には全編を通じて漆黒の空間が広がっている。それは綺麗に整った路地と曇り空の感覚だ。 ある意味このアルバムでは、Joy Divisionのようなバンドがパンクに対して行ったことを、Regisがテクノに対して行っている姿が披露されている。つまり、直線的なリズムを刺々しいものに置き換え、全体的なスピリットはそのままに、形式に対して深みと多様性を加えているのである。この点において近年のRegis作品は、O'Connorがこれまでに携わってきたものの蓄積物であるかのように感じられる。『Manbait』は彼の最重要作品を集めたものである訳ではないし、そうあろうとしている訳でもない。しかし、近年における(異論を唱える者がいるかもしれないが)成熟した彼の音楽を掘り下げることで、本作はO'Connor独自の音楽的アイデンティティが持つルーツへと至っているのである。
  • Tracklist
      01. Ike Yard - Loss (Regis Version) 02. Dalhous - He Was Human And Belonged With Humans (Regis Version) 03. Regis - Blood Witness (Original 12-Inch Mix) 04. Vatican Shadow - Church Of All Images (Regis Version) 05. Family Sex - Manbait (Regis Version) 06. Regis - Blinding Horses (Original 12-Inch Mix) 07. CUB - C U 1 08. Regis - Blood Witness (Downwards Extended Version) 09. Tropic of Cancer - Plant Lilies At My Head (Alternate Version) 10. Regis - Blinding Horses (Turin Version) 11. Raime - This Foundry (Regis Version) 12. Regis - Blinding Horses (Stableboy Version)