Jeff Mills - Exhibitionist 2

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  • デトロイトテクノにおいて、Jeff Millsは常に物事を深く考えてきた。デトロイトの偉人たちの多くが、新たに語ることをほとんど持ち合わせていない時代において、Millsがクリエイティブであり続けられるのは、彼が壮大なアイデアを持っているからなのかもしれない。しかし、マルチメディアでのコラボレーションやコンセプトアルバムなどに取り組み、そのキャリアが広範に渡っていくようになるにつれ、彼のテクノフューチャリストな哲学が損なわれてしまうことがあった。 彼はコンテンポラリーアート界に対する興味を示しながら、商業的なダンスミュージックにおけるエリート主義を批判(英語サイト)している(その面での所業はコンテンポラリーアート界の方がはるかに辛辣だ)。彼はテクノにおけるフューチャリストの信条を説き、そして、古典的音楽機関の世界最高峰、Western Classical Orchestraとコラボレーションを行っている。つまり、先見的なアイデアに反し、彼はおかしな懐古主義者として映ってしまうことがあるのだ。 Millsによる『Exhibitionist』のコンセプトも同様に相反している。2004年の『Exhibitionist』(英語サイト)では、複数のカメラとターンテーブルセットを使用して、MillsのDJスタイルが長所も短所も含めて捉えられていた。同作の狙いに関して語られていたのは、DJというアートにまつわる謎を解き明かす、ということであり、同作は確かに魅力的な映像を実現していた。しかし、ダンスミュージックは常にDIYであり、90年代と00年代を通じてMillsのようなアーティストを崇めてきた多くのキッズたちは、自宅のベッドルームにターンテーブルセットを持っていた。作品の真の目的はおそらくそれほど高尚なものではなかったのかもしれない。MillsのDJにおける創造性と技術を認識させ、テクノDJである彼を従来の音楽ヒーロー(ロックギターの神、先見的なソロジャズミュージシャン、ピアノのマエストロなど)と並列して捉えることを求めていたのではないだろうか。 前述のコンセプトを拡張し、アップデートしたオーディオビジュアル大長編作『Exhibitionist 2』では、この動機がよりオープンに表れている。リリースと同時に発表された文章において、Millsは、生楽器を演奏するミュージシャンや、その場その場でリズムを考えるソリストのように、DJがリアルタイムでアイデアの創出とその実現作業を同時に考える過程を明かしたかった、と説明している。このプロジェクトに意味が無い訳ではないが、最終的に魅力を損ねているのは、このように作品の正統性を求めているところだ。 今回の2枚組DVDセットは『Exhibitionist』第一弾の後を受けての続編であり、約40分の映像にはMillsのDJに対する現在のアプローチが映し出されている。彼はCDJを3台、909を1台、そして、このプロジェクトのために用意したプロダクションツールのような一連の機材を用いている(その中のいくつかは付随するCDでもフィーチャーされている)。ある意味、変化したものはそれほど無く、Millsは引き続き、流動的で変形していく全体像の中で、トラックを小さな構成要素として使用している。唯一の違いは、テンポと激しさを大幅に抑制している点だ。フェーダーを小刻みにタップし、ノブをつまみながら、ミキサー上で踊る長い指に見とれてしまうが、そのサウンドは至って普通だ。実際のクラブ環境でMillsが到達できるピークというよりも、これだけのセッティングを使って何ができるのかをリハーサルしている場面を見せられているかのように感じる(近年、Millsのセットを見たことがある人なら、彼が今でもピークに達することができることを証明できるはずだ)。 2枚目のディスクでは、Millsの意識はスタジオに向けられている。ハードウェアの数を減らしたセッティングで、50分間に渡り、トラック3曲を同時に叩き出す彼の姿を目にすることができる。最初のトラックは颯爽と過ぎ去っていくが、残りの2曲ではプリセットを冗長にいじり過ぎており、Millsの解説もそこで何が起きているのかをほとんど説明できていない。各セクションは早々と転換していくため、完全に素人の人には理解が難しく、Millsの難解な装置について馴染みのないラップトッププロデューサーですら、理解に苦労するかもしれない。専門用語を使えば、スタジオでの制作トリックやヒントにすることができたかもしれないが、Millsはそういった言葉遣いも避けている。 本DVDのその他の部分は、さらに本筋から外れて放浪している。ディスク2を締めくくるのは、ダンサーPierre Lockettの色褪せた映像に合わせた「Something In The Sky」スタイルの長尺ミックスだ。音楽は素晴らしいのだが、今回のコンセプトとの関連性を見出すのは難しい。そして、909を用いるMillsと、ドラマーSkeeto Valdezとの対面演奏は実に酷い。このセクションは完全にDJの流れに乗ったMillsからスタートし、その後、ぎこちなくValdezのソロパートにカットされ、そこでValdezは見事にパラディドルをメイクするのだが、それを909の横で行う意味が分からない。簡単な相互演奏がその後に続くのだが、Millsが望んでいたであろう魔法のような相乗効果には程遠い。Millsが熟練のドラマーと同じく正当なミュージシャンであることを示そうとする表向きのアイデアには不備があり、ぎこちない結果に終わっている。 『Exhibitionist 2』で唯一、素晴らしい瞬間は、その後に続くソロセクション"TR-909 Workout"だ。スポックシューズを吐いて、シミひとつない白い床に屈みこむMillsは、909上であり得ないほどの鋭さを見せる。神経質なクモのように彼の手がノブとボタン上で踊る。そのサウンドはただ素晴らしいだけでなく、深く音楽的で、クラブをワイルドに盛り上げる光景を容易に想像できる。卓越したパフォーマンスではあるのだが、必要性を感じられなかったドラマーとのセッションの後に、こうした映像を提示すると、その価値はいかがわしい印象になる。結局のところ、テクノとは、とりわけ、Millsのテクノに対する視点とは、音楽性における既存のアイデアに順守することなのだろうか? その背景で「『Exhibitionist 2』は一部で過去のものになってしまった行為を引き立てられず、現代の音楽制作に光を照らせていない」と、どうしても考えてしまう。Millsは自身の映像について「今日のテクノロジーがいかにDJを自由にし、結果、さらにクリエイティブにしているのかを理解する機会」だと語っている。しかし、そうであるとすれば、なぜ彼はいまだにUSBスティックではなくCDと戯れているのだろうか? そして、ソフトウェアのアルゴリズムに任せられるにも関わらず、なぜ彼はビートマッチングに無駄な時間を割いているのだろうか? そうしていれば、より表現力豊かな行為を実現するために自身の両手を使えるようになっていただろうし、ぶつかり合うキックによりミックスが台無しになっているいくつかの場面を修正できていただろう。 かつてMillsは「真の」表現を損なわないようにするため、コンピューターに対する嫌悪について次のように語っていた。「コンピューターに比べれば技術的に可能なことは限られているでしょうが、スピリットの発露という点ではこちらの方がより饒舌なはずですし、人間同士の対話という点でもより多くの意義があるはずだと考えています」。この「限られている」は、「DJは真の音楽表現ではない」とかつて述べていた人たちと同じように恣意的だ。Millsは音楽体系を確立するカギを握っているのかもしれないが、その過程の中で、彼はテクノにとって大事なものを置き去りにしている。
  • Tracklist
      Disc One (DVD): 01. Exhibitionist Mix 1 Part 1 (Four Angle Options) 02. Exhibitionist Mix 1 Part 2 (Four Angle Options) Disc Two (DVD): 01. Exhibitionist Mix 2 feat. Skeeto Valdez 02. Exhibitionist Mix 3 TR-909 Workout (Two Angle Options) 03. Exhibitionist Studio Mix 04. Orion Transmission Mix feat. Pierre Lockett Disc Three (CD): 01. Code Four / Running System / The Bells 02. Optic 03. Star People 04. AB 05. Strange Wind (From Something In The Sky) 06. Axis Studio Take One 07. Spiralism 08. T Minus Thirty 09. Start Collector’s Journal 10. Night People 11. Dance Of The Star Children 12. Condex (From The Occurrence) 13. Axis Studio Extra 14. Hydra / Synergy / Designer Frequency One 15. Signals To Atomic One 16. Mills Machina (Live) / Gamma Player Loop