- ダンスミュージックでは往々にして、ひとつのジャンルで独自のサウンドを確立することで成功が訪れる。そしてそれは、同じことを何度も繰り返す口実にもなり得る。オランダ人のDave Huismansはトレードマークと言えるスタイルを持っており、そこから見事な数の作品をこれまでに築き上げてきた。彼のプロジェクトA Made Up Soundと比肩するほど容易に識別可能でありながら、奇妙で予測不可能なプロデューサーは、近年ではなかなか思い浮かばない。彼の12インチはどれも新たな趣向が凝らされているが、Huismansによる同名レーベルの最新作2枚では、彼独自のサウンドをさらに捩じって変化させている。
"Stumbler"はその好例だ。変化を加えられるコードが引きずるように展開し、ステレオ感のある音場に拡散していく。聞いた瞬間に彼のサウンドであると分かるが、これほど精工に捩じりを加えたトラックはこれまで無かった。"Syrinx"も全く同様、見事に均衡の整ったトラックだ。無重力室に閉じ込められたエレクトロトラックのような印象で、今にも彷徨って行きそうなビートの周りを、歯切れのいいシンセとブリーピーなコードが回っている。
若干、強固になったサウンド上をしっかりと踏み込む「AMS008」は、さらにコントラストを際立たせている。"Havoc"は激しくスウィングする刺々しいトラックだが、左から右に滑り込む柔らかなコードが鋭いエッジを中和しており、時折、トラック全体を飲み込むこともある。"Half Hour Jam On A Borrowed Synth"は特に奇妙で、以前のHuismansに比べ、脆くガラスのようなテクスチャーを含んでいる。しかし、このトラックは典型的なオフビートジャムであり、彼が普段用いるジグザグ状のスケールを振動させている。このタイトルからは、Huismansが初めて使う機材を色々と模索している光景が思い浮かぶ。そしてそれは、この10年間に我々が目撃してきたことでもある。つまり彼は、核となる音楽の理想形はそのままに、巧妙に自分自身を刷新しているのである。
TracklistAMS007:
A Stumbler
B Syrinx
AMS008:
A Havoc
B Half Hour Jam On A Borrowed Synth