Mathew Jonson - fabric 84

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  • Mathew Jonsonによる『fabric 84』が、ロンドンにあるクラブfacricの16周年を祝った10月16日(金)に発売となったのは偶然の一致などではない。カナダ人の彼は2014年の同日にライブを行っており、その時の90分セットがとても素晴らしかったため、誰もが切望するミックスシリーズを手掛ける同クラブのスタッフチームが、それをリリースすることにしたのだった(笑い話だが、fabricのアニバーサリーパーティーにあたって仮装をするという取り決めがあり、Jonsonは日本のバニースーツで全身を着飾ってパフォーマンスした)。日曜日の夕方遅くにRoom Oneでプレイした彼の枠は、Ben UFOとRicardo Villalobosに挟まれており、長時間に及ぶマラソンパーティーが24時間目を迎えようとしていた時だった。私はその場所に居合わせなかったが、多くの人たちはその時のことをアニバーサリーの中でベストだったと称している。 『fabric 84』が同シリーズの他作品と一線を画しているのはこの点だ。本作はfabricでオーディエンスを交えてライブレコーディングされた唯一のエディションであり、さらに、同シリーズの多くは、fabricでのパフォーマンス体験を切り取り、自宅や車内で聞きたいと思う要素とバランスよく提示しようと、スタジオでミックスを仕上げているからだ。Jonsonのミックスクオリティは既にダンスフロアで証明されているため、問題となるのは、寝る間を惜しんで汗ばむ人々で賑わうそうした空間から引き離された時、その音楽が果たして同様に機能するかどうかだ。そしてその答えは大部分において「イエス」である。 Jonsonはパフォーマンス時にCD化されることなど思いもしていなかっただろうが、それにより、前準備に注がれる構想や労力が損なわれたりはしていない。ライブに対する作業のほとんどは実際にステージで演奏する前に行われる。fabricで公演を行う際、Jonsonは通常より多くの時間を費やしていると語っている。トラックリストに目を通しただけでも、そのことが分かる。クラシックなトラック、スペシャルなエディット、リミックス、そして、未発表音源が激しくブレンドされているからだ。Omar-SShackletonRicardo Villalobos(いずれも英語サイト)など、彼よりも前に同シリーズを担当したアーティストと同様、今回のミックスも完全に自分自身のプロダクションから成りたっており、ユニークで他には無いクオリティを生んでいる。 前述のパーティーで、Ben UFOが激しく畳みかけるトラックを立て続けにミックスしてセットを締めくくるだろうと確信していたJonsonは、「ファンキーなトラックではなく、まずテクノを」プレイした。Cobblestone Jazzの"Northern Lights"が完ぺきな幕開けを演出している。タフでありながら計算されており、トレードマークである揺らぎの中に詰め込まれる十分なエモーションが、新たな方向性を示唆している。続くトラック"Dayz"ではファンクネスが忍び寄り、その後、"Learning To Fly"にて強烈でトリッピーなワンツーパンチを繰り出し、"Marionette"では数か所に渡ってエネルギーを増幅させている。新たにスネアが叩かれたり、新鮮なメロディが表面に泡立ったりするたび、fabricのRoom Oneが大盛り上がりしている光景を思い浮かべてしまう。 酩酊した足のおぼつかないレイヴァーたちにJonsonが何故人気なのかは、そうしたところから容易に分かる。本ミックスには、今回のようなパーティーの時間帯に望まれる要素がすべて備わっているからだ。つまりそれは、"In Search Of A New Planet With Oxygen"での超越的なシンセラインや、"Decompression"でのざらついたフックなどであり、中でも特筆したいのは、20時間以上に渡って4つ打ちが鳴らされた後に訪れる、"Imagination"における叩きつけるブレイクビーツだ。そしてJonsonは終盤にかけて、自身の最新動向を披露している。終盤は、Subb-an"Say No More"のリミックスによる艶やかなボーカルとUKガラージ的感覚でスタートし、最後はInner City"Good Life"のテッキーなリミックスで締めくくっている。今回のミックスに欠点があるとすれば、中盤のトラック5曲だ。どれも決して悪くないし、軟弱である訳でもないのだが、ただ、他の部分のように上手く表現されている訳でもなく、印象に残らないのだ。 『fabric 84』は素晴らしいミックスであると同時に、高く評価を集めるハウス/テクノシリーズの復活という重大な点を打ち出している。Joseph CapriatiMatt TolfreyArt DepartmentJoris Voorn(いずれも英語サイト)が手掛けた『80』から『83』まではどれも、fabricの基準に達していなかった。幸運にもJonsonのセットを直に目にした人、もしくは、私のように12か月後に耳にした人、そのいずれにおいても、本作を聞いて感じることは同じで、実際にRoom Oneで踊りたい気持ちになってくるだろう。
  • Tracklist
      01. Cobblestone Jazz - Northern Lights 02. Mathew Jonson - Dayz 03. Mathew Jonson - Learning To Fly 04. Mathew Jonson - Marionette (The Beginning) 05. Units And Measurements feat. Deadbeat - Octopus Brains 06. Tobias. - If (Mathew Jonson & The Mole Remix) 07. Mathew Jonson - In Search of a New Planet With Oxygen 08. Mathew Jonson - The World Will Come Around 09. Mathew Jonson - Automaton 10. Mathew Jonson - Decompression (Mathew Jonson Acid Cut) 11. Mathew Jonson - Decompression (Mathew Jonson Force Remix) 12. Mathew Jonson - Ghosts In The A.I. / Decompression (Mathew Jonson Mash Up) 13. Mathew Jonson - Imagination 14. Subb-an feat. S.Y.F. - Say No More (Mathew Jonson Remix) 15. Mathew Jonson - Cause Baby It Just Feels Right 16. Mathew Jonson - That Girl Can Dance 17. Mathew Jonson - That 101 Is Mine 18. Mathew Jonson - Feels Like Liquid 19. Mathew Jonson - Body In Motion 20. Kevin Saunderson feat. Inner City - Good Life (Mathew Jonson’s Acid Mix)