Ricardo Villalobos - Easy Lee / Dexter

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  • 『Alcachofa』について語られていないことなどあるのだろうか? Ricardo Villalobosという、まだあまり名が知られていなかったDJ/プロデューサーによる画期的なアルバムは、エレクトロニックミュージックの進む道を変化させ、ハウス/テクノミュージックの最前線にミニマルサウンドを打ち立てた。振り返ること10年以上前、『Alcachofa』がリリースされたのは2003年。このアルバムが持つインパクトは計り知れない。さらに何年も前から、Perlon、Klang Elektronik、Playhouseといったレーベルがミニマルダンスミュージックシーンを牽引してきたことは周知の通りだが、当時の段階では、どのレーベルもVillalobosのデビューアルバムに匹敵する規模のヒットはリリースしていなかった。Perlonが初期に発表したカタログのほとんどは、DimbimanやAkufenのように実験的であるか、Soulphictionのように機能的であるかのどちらかで、マス層にアピールする要素はほとんど無かった。同じことはPlayhouseにも言えていた… 『Alcachofa』が発表されるまでは。 『Alcachofa』以前のVillalobosもれっきとしたプロデューサーであり、しっかりとしたDJとして多くの人に認知されていたが、それ以上に語ることは特に無い存在だった。2003年以前に発表された彼の作品は、"Heike"や"808 The Bassqueen"、そして、"Say That You Love Me"といった特徴的なトラックのように、機能的なテックハウスと、極度にトリップ感を増したミニマルを混ぜ合わせたものだ。そうした作品は深みの無さとはかけ離れていたが、その中の秀逸作ですら『Alcachofa』の精工さは持ち合わせていなかった。そしてこの傑作アルバムでそのサウンドを最も特徴づけていたのが"Easy Lee"と"Dexter"である。オーディオオタク、DJ、カジュアルなリスナー、そのいずれであれ、両トラックには訴えかけてくるものがあるはずだ。 "Easy Lee"と"Dexter"が持つ魅力の一部は、感情面において多義性があることだ。この点は、前者の場合、Villalobos自身の声から最初に感じ取ることができる。これまで完全に解読されたことのない歌詞は、売られる直前だった知人宅の庭に漂っていた「楽園の雰囲気」に触発されたものだ。「メランコリックで、とても悲しいものと、とても嬉しいもののちょうど中間に位置している」とVillalobosは『Alcachofa』を発表した頃に語っている(英語サイト)。"Dexter"ではもっとハッキリとしたメロディが使われているため、トラックに広がるムードは、比較的、明快に感じられるが、この独特な感覚を生んでいるのが、ボーカルによるブリップ音と陰気なメロディのループなのかどうかを判断するのは難しい。 Ricardo Villalobosは、彼が生きる時代における偉大な音楽家のひとりだ。彼は自身の心と魂を『Alcachofa』に注ぎ込んだ。それはおそらく、彼がリリースしてきたどのアルバムよりもだ。今回の再発盤は同アルバムの最もユニークで貴重な瞬間をフィーチャーしている。その瞬間は12年前に初めて聞かれた時と変わらぬ魅力を今も放っている。
  • Tracklist
      E Easy Lee D Dexter