- Sadeをリミックスすることはまったくオリジナルなアイデアではない。Sadeは何十年も広く愛されてきたイングランドのバンドであり、フロントマンであるSade Aduはクラブミュージックにとって完ぺきなダークな官能性を伴う歌声を奏でている。そして当然の如く、彼女は何年にも渡って数え切れないほどのエディットとリミックス(公認、非公認どちらも含む)の対象となってきた。Ben Wattから、Kenny LarkinやLate Nite Tuff Guyまで、あらゆるアーティストがSadeのエディット/リミックスを手掛けている。しかし、そうした大物たちが関わってきたとはいえ、「SAD Edits 001」を好きにならずにはいられないだろう。ベルリンのOYE Recordsがディストリビューションを手掛けたFlorian Kupferによる黒レーベルEPだ(彼は正体を隠すようなことはそれほどしていない)。
Aサイドは1992年の『Love Deluxe』に収録されていたスロージャム"I Couldn't Love You More"だ。同曲がKupferによる活発でごつごつとしたハウスビート上に重ねられている。2013年の"Feelin"(英語サイト)があれほどのヒットになったのは、このトラックのようにダーティーで不完全でありつつも、暖かみがあってグルーヴィーなコントラストがあったからだ。Sadeのスモーキーでスウィートな歌声が投下されると、夏の最後に必ずプレイされるであろう中毒性のあるボーカルハウスが誕生する(もちろん、短期間にプレイされ過ぎ無ければの話だ)。Bサイドでは"Never Thought I'd See The Day"が再解釈されており、原曲から削り出されているのは硬質で滑らかなキーボード(このトラックで聞くとFXHEのようなサウンドに聞こえる)と、遠く彼方で歌われているように漂い続ける「あなたがわたしを守ってくれたらな。今、守ってくれたなら。。」という歌声だ。Aサイドに比べて調子を抑えた印象だが、決してひけを取っていない。多くのポップものエディットと同様、おふざけ的感覚があるが、本作は何度も聞きたくなる1枚だ。
TracklistA1 SAD 001 A
B1 SAD 001 B