Vester Koza - PRISN

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  • 『Blade Runner』で一瞬ではあるが特に気に入っている場面がある。Harrison Fordが演ずる主人公が空を飛ぶパトカーに乗り、ラーメンを食べ、雨が降る未来のロサンゼルスを彷徨う場面だ。周囲は見渡す限り、点滅する街灯、高層ビル、巨大なビデオ広告で埋め尽くされ、まるで唖然としてしまうほど大きな規模にした渋谷やタイムズスクエアのようだ。殺伐としつつも圧倒的なその光景を、主人公が空飛ぶパトカーの暖かい車内から眺める。フロントガラスに雨が激しく打ち付ける中、彼はラーメンをすするのだ。私がお気に入りにしているテクノのレコードの多くにはこのシーンと同じ感覚がある。冷めていて未来的でありながら、愛らしく安らぎすらある。Vester Kozaの最新EP「PRISN」もそんな1枚である。 「PRISN」に収録の全4曲も見事にモノトーンにくすんでいる。この性質はこれまでのVester Koza作品を定義づけるものだったが、今回は特に大きな効果を生み出している。これはクラブでの機能性よりも優先された刺激的なサウンドデザインのおかげだと一部では言える。1曲目の"GET_INTENT"を例に挙げよう。のんびりとしたグルーヴが素晴らしい。しかし、本当に意識を惹きつけるのは頭上で鳴っているサウンドだ - モールス信号や水滴のような音を組み合わせている。"DECEIVED"と"OPT_iCAL_IN"では水道の弁のような音が鳴っている。その効果は暖かく同時に侘しさがある。前者はBPM96でふらふらと展開する。ディープハウスのリズムと霧の中でぼんやりと光を放つコードを使った後者は本作で唯一クラブチューンと言えるトラックだ。このトラックを本作のベストとしてしまいたくなるところだが、注目をさらうのは"BIND_DREAM_SERVICE"だろう。これまでのVester Koza作品の中で最も大胆な楽曲だ。沈み込む誇りっぽいドラム上を琥珀色をしたキーボードが響き渡る。眠たげなブロークングルーヴによる7分間だ。
  • Tracklist
      A1 GET_INTENT A2 DECIVEID B1 OPT_iCAL_IN B2 BIND_DREAM_SERVICE