Nina Kraviz - DJ-Kicks

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  • ロシア人アーティストNina Kravizが昨年『DJ-Kicks』を手掛けることを発表した時、彼女の1つのアイデアが人々の神経を逆撫でした。そのアイデアとは、彼女が昔ラジオ配信をしていた時のように「語り」をミックスに含めるというものだった。他にも、DJブースでの踊りや入浴シーンの撮影など、彼女の言動は物議を醸すことが多い。彼女は時の人であることは間違いないが、こうした物議によって彼女の音楽が安っぽく派手なものであると思われがちなところがある。しかし、このことを否定するのに、今回の『DJ-Kicks』ほど最適な作品は無いだろう。Kravizは本作を通じて予想以上に深い場所へと突き進んでおり、クラブを盛り上げる、というよりも、アフターアワーズのフロアを延々と揺れ動かすようなミックスを展開しているのだ。ディープかつヒプノティック、そして抑制の取れたKraviz『DJ-Kicks』は、クラブDJとしての彼女のスキルではなく、最近スタートしたセルフレーベルтрипのショーケースとなっているようだ。 трипは「トリップ」と発音し、この場合トリッピーという意味になのだが、この言葉は今回の『DJ-Kicks』に何を期待すべきかを教えてくれる。Kravizのミックス方法は従来とは少し異なっている。彼女のミックスは坦々とした長尺トラック(трипの1枚目の収録トラックExos"Nuclear Red Guard"や自身のトラック"Prozimokampleme"などだ)を数多く使って土台を作り上げ、そこへ他のトラックを重ね合わせていくというものだ。しかもそこには気楽な感じが漂っており、まるで自宅のレコード棚から無作為に音源を選んでいる印象だ。しかし、この気楽さは機能する時もあれば、しない時もあるようだ。というのも、Kravizの気軽なノリのミックスは聴いていて入って行き易いのだが、本作ではしらけてしまっている場面があり、Population OneやGoldieなどリスナーの意識をしっかりと掴もうとしているトラックがたまにしか使われていない。ちなみに、David Bowieが漂うようなボーカルを提供しているGoldie"Truth"、このハードル高めの選曲をミックス序盤に持ってくるあたりは、Kravizが卓越したレコードディガーであることを思い出させてくれる。 終盤にも同じような場面がある。それはFreak Electriqueによる2003年の叙事詩"Parsec"がプレイされる時だ。それまで展開してきた漆黒の空間に心地よい一筋の光が差し込み、浮遊感が保たれたかと思うと、ミックスは再び序盤と同様のスレートグレーの色に染まって行く。この序盤と終盤には完全にKravizの世界が広がり澱んだ空気が渦巻いており、音楽が眠たげに下降していく中で囁かれる声はその空間に完璧にフィットしている。 しかし、それ以外の中盤はと言うと、単にゆっくりトラックをミックスしているだけで、特に引っかかるものがない。この聞き慣れないミックススタイルは他者のそれとは一線を画しているものの、退屈しやすいリスナーが聴くと飽きてしまうのではないだろうか。これまでKravizの音楽が磨き抜かれたもの、完璧なものであったことはあまりないが、むしろ、その荒削りな感じが彼女をエキサイティングな存在にしていた要因の1つだ。良かれ悪しかれ、この『DJ-Kicks』には従来のスタイルに捕らわれないKravizの姿が映し出されている。
  • Tracklist
      01. Egotrip - Dreamworld (Acapella) 02. Nina Kraviz - Mystery (DJ-Kicks) 03. Area - Broken Glass Everywhere 04. Prototype 909 - Atma 05. Goldie - Truth 06. Bjarki - Revolution 07. Nina Kraviz - IMPRV 08. Bjarki - Polygon Pink Toast 09. Population One - Bonus Beat w/ Flatner / Ingram Project - Da Comin' (Jay Denham RMX) Acapella w/ Parrish Smith - 1.0 / 8.0 Afrika Genocide Acapella 10. Breaker 1 2 - In The Distance 11. Steve Stoll - Pop Song 12. Bradley Strider - Untitled 13. Stanislav Tolkachev - I Will Not Pee In The Pool 14. Armando - Pleasure Dome 15. Nina Kraviz - Prozimokompleme 16. Baby Ford - 24 HR 17. Fred P - Higher Mentalism (edit) 18. Exos - Nuclear Red Guard 19. Steve Stoll - Corona 20. Freak Electrique - Parsec 21. Population One - Out Of Control (Vocal Mix) 22. Exos & Octal - Grow 23. Porn Sword Tobacco & SVN - Complaints A 24. Plaid - Oi 25. DJ Bone - The Vibe 26. Adam Beyer pres Conceiled Project - Pattern 1 27. Polygon Window - Quino-Phec 28. Nikita Zabelin feat. dBridge - So Lonely 29. Rizhome - Corridor