Gaussian Curve - Clouds

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  • アムステルダムのレーベルMusic From Memoryがこれまで焦点を当てていたのは過去の作品だった。潮騒のジャズファンクを展開したJoan Bibiloni『El Sur』、煙を燻らす空間の広がるLeon Lowman『Liquid Diamonds』、豊かな感情を喚起するGigi Masin『Talk To The Sea』、そのどれもが回顧的なリリースだ。これはレーベル設立者であるAbel Nagengast、Jamie Tiller、Tako Reyengaが、忘れ去られたアーティストの作品から最良の楽曲を探し出そうとベストを尽くした末の結果である。 最初の3枚のリリースの中で言えば、Masinの『Talk To The Sea』が最も印象的に見える。彼は素晴らしい作品(特に1986年にLP『Wind』)を発表していたにも関わらず、大衆の目に留まることのなかった不遇のイタリア人コンポーザーだ。Music From Memoryから発表された『Talk To The Sea』は多くのリスナーの琴線に触れることになったわけだが、そのリスナーの中にいたのがYoung MarcoことMarco SterkとJonny Nashだ。掘り出し物を見つけるセンス、友情、そこにReyengaの計らいも相まって、2014年の3月に3人はアムステルダムにあるSterkのスタジオで週末を過ごし音楽を制作することになった。 3日間でレコーディングされたにも関わらず、『Clouds』には性急さを否定する雰囲気が漂っている。聞く者をゆっくりと落ち着かせるアルバムであり、日常の慌ただしいリズムから解放されているのだ。「3人ともずっと昔からお互いを知っているような感じだった」とMasinはJuno Plus(英語サイト)に語っており、そうした一体感/連結感は作品全体に行き渡っている。Nashによるギター、Sterkによるシンセ、そしてMasinによる卓越したピアノコードというベーシックな要素から成り立つ"Talk To The Church"と"Dewdrops"が素晴らしい。"Impossible Island"や"Ride"で使われているドラムマシンは落ち着いたリズムを刻む一方、The Longest Road"で吹き荒れる3分間のトランペットは、本作で最も大胆な場面だ。 "Red Light"の導入部には、Sterkのスタジオの窓から聞こえてくるアムステルダム赤線地区の雑踏の音が使われている。その音が静かにフィルターに包み込まれていくと、スタジオはワルムス通りの猥雑さとはかけ離れた、まるで秘密のオアシスのような印象に変わる(Sterkは『Clouds』をレコーディング後、直ちにこのスタジオを空け渡したらしい)。Nash曰く、今回のアルバムを作るよりも、プロジェクトの名前を決めるのに時間がかかったらしい。Gaussian Curve(ガウス曲線)はなんともしっくりくる名前だ。理論上、ガウス曲線の両端は無限に伸びていく。それは今回の音楽にも当てはまるだろう。
  • Tracklist
      01. Talk To The Church 02. Impossible Island 03. Dewdrops 04. Ride 05. Broken Clouds 06. Unsolved 07. The Longest Road 08. Red Light