Move D - The KM20 Tapes Volume 2 (1992-1996)

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  • 「The KM 20 Tapes」の名前は、制作に使われたハイデルベルクにあるスタジオの住所Kleine Mantelgasse 20に由来しており、このシリーズではMove Dが1992年から1996年までに録音した未発表音源が取りまとめられている。そしてそのホームとなっているのが、彼と共にMagic Mountain Highの一員として活動しているJuju & JordashのJordan Czamanskiが運営するレーベルOff Minorだ。ざらついていてスモーキー、そして静かに洗練されている「The KM 20 Tapes Vol. 2」には「Vol. 1」と同様、トリッピーなホーム・リスニングを提供するトラック3曲が収められている。 A1の"Wilenlos"は漂うダブ・テクノのコードに微かに聞こえるぬかるむキック・ドラムとハイハットを携えた12分間に及ぶトラックだ。比較的、音素材を散らしたアレンジとなっており、好きなだけ長くプレイし続けられる。各要素は非常に漸進的かつ微細にフェード・イン/アウトしているため、その変化を気付くことはほとんどないだろう。"Evil Trak"においても"Wilenlos"の控えめな特性が保たれているが、さらに不気味な感覚が増している。ゆっくりと膨れ上がるリバースしたピアノのコード音は、不安感を定期的にもたらし、ダーティーなアシッド・パルスはPlastikmanの『Sheet One』を思わせる面影がある。本作のハイライトはテンポを落とした"Inside The Dollhouse"だ。吹き抜けるシンセのメロディがハットと共に倍速で躍動しているが、ここには本作の核となる部分に一貫して流れているIDMからの影響がはっきりと表れている。当時、Move DはWarpから作品をリリースしていたことを考えれば当然だと言えるだろう。 暖かなアナログの質感とテープのヒス・ノイズをたっぷりと含んだ「KM20 Tapes Vol. 2」は、「ロウ」でマシン的な感覚に傾倒している最近の流れを考えれば、特に的を得た作品という印象がある。しかし、流行はさておき、Moufang(Move D)作品における卓越した技術はカリスマ性と普遍性を保証していると言えるだろう。
  • Tracklist
      A1 Willenlos B1 Evil Trak B2 Inside The Dollhouse
RA