2562 - The New Today

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  • オランダ人Dave Huismansのキャリアは2562名義でのテクノとダブステップの融合から始まった。そのサウンドは今でも彼の音楽の中に聴くことが出来る。彼の4枚目となるアルバムでは、そのリズムがかつてなくヘビーで鋭く、漆黒の低域が真の強度を持って猛威を振るっている。Rashad Beckerにより最大限のインパクトにまでマスタリングされた『The New Today』のサウンドはがらんとしていながら、"Cosmic Bounce"のような稀代の名作によってダンス・フロアではない場所を目指したアルバムとなっている。 6週間のニューヨーク滞在中、ポストパンク、ニューエイジ、初期シンセ作品をインスピレーションの題材に構想された『The New Today』は、それが意図したものであるかどうかは別として、ノーウェーブと80年代初期のマンハッタンにおけるアートファンク・シーンが持っていた既成概念を打ち破る精神に結びついている。決して崇拝的なオマージュになっているわけではなく、容易なカテゴライズを否定する自由な在り方の中で表現されているのだ。"Arrival"を支えている渦巻くディストーションはポストパンクのインダストリアルな灰色の領域と似ており、"Terraforming"のダーク・ディスコは当時のシーンがラテンとアフリカのポリリズムに興味を示していたことを思い出させてくれる。しかしこのトラック以降の『The New Today』はワイルドな未踏の荒野へと突入していく。James Holden『The Inheritors』の角ばったクラウトロック、ブロークン・ビーツ界におけるサイケデリック・ジャズのアイコン4Hero、そしてBrandt Brauer Frickの学術的なテクノ、この3つの要素が重なり合う場所だ。 結果、そのサウンドは美しくありながら殺伐としている。弔いの詩のように豊かなドラマ性を持つ"Drumcell"はAndy StottがアヴァンギャルドなMacbethの戯曲にサウンドトラックを付けているかのようだ。執拗に打ち鳴らされるビートと震えるピアノによる低域コードが用いられているこのトラックは、部屋中の空気を吸い込みながら胸を締め付ける力によって構築されている。"Cauldron"も同様のパーカッシブな異様性によって支えられているが、最初はか細く漏れ出していただけの暖かく液体的なコードが、最終的にトラックを完全に包み込み深い静寂へと変化させる。『The New Today』の楽曲全てが、こうしたトラックと同じ高みに到達しているわけではないが、Huismansは彼のサウンドの行く先を巡る可能性を拡張しているのは確かだ。本作はシリアスで複雑に絡み合った作品だ。そしてそれを紐解く心地よさがある。
  • Tracklist
      01. Arrival 02. Terraforming 03. Cosmic Bounce 04. Vibedoctor 05. Utopia 06. Drumroll 07. Cauldron 08. New Life