Novation - Audiohub 2x4

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  • かつてアナログシンセの持ち運びはリスキーな作業で、不安定なチューニングと壊れやすい内部構造のため、電源を入れる度にリスクを負う羽目になった(しかも電源が入るかどうかも分からなかった)。その中で、ソフトウェアシンセはスタジオではハードウェアの代替として認知されていったが、触知性の欠如からステージ上では重宝されてこなかった。しかし、ここ数年はかなり手頃な価格で小型のコントローラーやアナログ機器が発売されており、DJブースまたはステージにおけるソフトウェアの操作はこれまでにない程簡単になってきている。このような状況下で唯一不足していたのが、ライブパフォーマンスを重視した安価なオーディオインターフェイスだった。 Audiohub 2x4はNovationが発売した2イン4アウトのUSBオーディオインターフェイスだ。この製品が他の一般的な製品と異なっているのは、インプット数よりもアウトプット数の方が多いという点、そして製品名に「hub」という言葉が盛り込まれていることからも分かるように、3ポートUSBハブとしての機能を備えているという点だ。他のメーカーがこれまでサウンドカードにUSBハブ機能を盛り込んでこなかったのはやや奇妙にさえ思えるため、実際の機能を試す以前の段階で既にAudiohub 2x4には成功の香りがしていた。 しかし、Novationは、Audiohubが危険なほどラウドな出力を誇るオーディオインターフェイスだという点と共に、大抵の場合において外部電源が必要になるという点も積極的にアピールしている。箱の中のマニュアルと同封されている注意書きにその点が改めて示されているが、これは嘘ではない。実際、筆者が消費電力の大きいUSBデバイスKenton USB Soloを本体に接続すると、アダプタを接続しない限り本体の電源は入らなかった。結果から言えば、多くの人がこのインターフェイスを使用する際にアダプタを接続する必要性を感じることになるはずだ。筐体は堅牢で、メタル製ケースとゴム足はライブ時に重宝されるだろう。フロントパネルはフォノインプット1系統が備わっており、ゲインはノブで調整するのではなく、ボタンでLow/Highを切り替えるようになっている。NovationがAudiohubにTRSインプット端子を用意できなかったのは残念だ。この欠如は、コンピューター内ですべて処理し、外部のサウンドを用いるつもりはないという人以外にとって、この機材はスタジオ用インターフェイスとしては機能しないということを意味している。 バックパネルにはアウトプットチャンネル1+2にのみアサイン可能なTRSアウトプット端子と、1+2か3+4に切り替えてアサインできる2系統のフォノアウトプット端子が備わっている。残念ながらAudiohubにはMIDI端子が備わっていないが、これはUSB端子にMIDI-USBケーブルを接続すれば良いだけの話なので、そこまで大きな問題ではない。アウトプット1+2と3+4は共に専用のヴォリュームノブがトップパネルに備わっているので、暗所でもヴォリュームが調整しやすくなっている。尚、トップパネルにはヘッドフォンアウトプット用ヴォリュームノブも備わっており、ヘッドフォンアウトプットはチャンネル1+2と3+4を切り替えてモニターできるようになっている。モニターチャンネルの切り替えが行えるラウドなヘッドフォンアウトプット端子を備え、各種コントローラーが接続できるUSBハブとしての機能も備えているAudiohubは、ライブ用だけではなく、デジタルDJ用インターフェイスとしての機能も果たしていると言えるだろう。 Audiohubのもうひとつの特徴はiOS用インターフェイスとしての機能だ。iOSがCore Audioをサポートするようになったため、今は殆どすべてのインターフェイスがiPad上で動作するようになっているが、既存のインターフェイスでは他のUSB機器の追加接続が不可能だった。しかし、Audiohubでは3系統のUSB端子が使用できる。筆者の場合、Little MIDI MachineというiPad用アプリを使用して、Audiohubに接続したKenton USB Solo経由でYamaha CS10のシーケンスを行いながら、MIDIキーボードでGarageBandとドラムマシンアプリの演奏が行えた。Audiohubを使用すれば、複数のコントローラーをiPadへ接続できるようになるため、iPadをシリアスな音楽制作ツールに変えられるというわけだ。しかし、iPad対応機器によくありがちな残念な話なのだが、Audiohub経由ではiPad本体のバッテリーの充電は行えないため、ライブパフォーマンスには使用できないだろう。実際、iOS専用のインターフェイスの購入を考えているならば、Audiohubよりも優れた製品が存在するが、追加オプション、あるいは格安の製品としては一考の価値があると言えるだろう。 上記のような機能が備わっているAudiohubだが、肝心のサウンドが良くなければこれらの機能も意味がなくなってしまう。しかし、Focusriteによる96kHz、24ビットのサウンド、そしてパワフルなヘッドフォンアウトプットを備えたAudiohubは見事な出来の製品で、この価格帯としては素晴らしく深みのあるサウンドを提供してくれる。そのクオリティはMOTU製のハイエンド製品と比較しても遜色がなかった。 正直に言えば、低価格というメリットを考慮しても、Audiohub 2x4はパーフェクトな製品とは言えない。インプットがアンバランスのフォノ1系統のみである点、また専用のゲインノブが欠如している点はマイナスで、MIDI端子の欠如も痛い。しかし、このインターフェイスは自分の役割を理解している。その役割が自分のニーズにマッチする人ならば、フレキシブルで素晴らしいサウンドのインターフェイスを手に入れたと思えるだろう。シンプルなセットアップのみに対応できる簡単な機材だが、ライブパフォーマンスに挑戦したいと思っている人にとっては手頃な価格の解決策と言えるだろう。 Ratings: Cost: 4/5 Versatility: 3/5 Sound: 4/5 Build: 4/5
RA