Dopplereffekt & Objekt - Hypnagogia

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  • Dopplereffektと一緒に今回のスプリット盤に収録されると分かったとき、Objektはかなり喜んだに違いない。結局のところ、ベルリンを拠点とするObjektの作品にハッキリと表れているのは、デトロイト・エレクトロからの影響であり(鋼鉄のフューチャリズムを表現した"Fishbone"を思い出して欲しい)自身のDJセットでは、Drexciya的な領域に頻繁に顔を覗かせている。しかしながら、こうした影響を抜きにしても、「Hypnagogia」のトラック2曲は共に素晴らしく機能し合っている。それぞれ、壮大なエレクトロだが、形式に対し大胆な姿勢を取ることを恐れておらず、恐怖、もしくは、恍惚の空気をダンス・フロアに持ち込むよう見事に処理されている。 Dopplereffektの"Delta Wave"は、恐怖に傾倒したトラックだ。シンセ・ストリングと声が生み出す冷たい水流の中を、ほぼ骨組みのビートのみで進んでいく。大げさなコード進行が転がり戻ってくるたびに、ますます分厚く酩酊感を増していく。ディストピアSFのベスト作品のように、そこには恐怖に対する奇妙な魅力を放つ何かがある。Objektによる"Ganzfeld"は、若干軽めの印象を外観だ。最も評価を集めている彼のトラックは遊び心を取り入れていることが多い。"Cactus"でのぶくぶくと膨らんだベースや、"Agnes Demise"中盤での激しく揺れるメルトダウンがいい例だ。今回、テンポはBPM150まで早められているものの、バイブスは割と落ち着いている。とは言え、ストロイドで出来たファンク・ベースのサウンドや、周期的に激しく畳み掛けてくるコードの展開など、多くの要素が詰め込まれている場面もある。しかし、基本的には、1音で孤独に鳴る低音によって、展開を作らず静止している状態であることがほとんどだ。キラキラと光を跳ね返す空間音、極小ハイハットによる一斉射撃、グリッチ音による混乱する瞬間など、一番の驚くポイントは、ミクロ・レベルのディテールに潜んでいる。達人の域に達している緻密さで、丁寧に全要素が処理されているのは、いつもの通りだ。もしもDonald(Dopplereffekt)が、今すぐ引退することになったとしても、Objektがいる限りエレクトロの未来は安心だろう。
  • Tracklist
      A1 Dopplereffekt – Delta Wave B1 Objekt – Ganzfeld