Wildest Dreams - Wildest Dreams

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  • Harvey Bassettは、いるべき場所に、いるべき時にいるのが得意なようだ。彼はヒップホップが生まれた時にはニューヨークに、セカンド・サマー・オブ・ラブの時にはイギリスにいた。彼が初めて発表した7インチは70年代後半にJohn Peelによってプレイされているし、ミックス『Sarcastic Study』やBlack Cockのエディット作品はコズミックDJの新世代に信じ難いほどの影響を与えている。彼は他には誰も気付かないものを探り分ける嗅覚を持っているのだ。もともとディスコ・オタクが集う投稿掲示板で評判を集めた男だったが、今日では、それをはるかに飛び越える国際的にカルトな存在となるまでに成長している。今年のSónar By Dayではトリを務め、25周年を迎えたジャパン・ツアーでは盛大なる歓迎を受けている。こうした正当な評価を集めた彼が今回、発表するのが『Wildest Dreams』、CreamやDeep Purpleといったブリティッシュ・サイケデリック・ブルースを存分に取り入れた回顧的なロック・アルバムだ。 イギリスからの影響がありながら『Widest Dreams』は完全な西海岸の作品だ。カバー・デザインは『Kapt. Kopter & The Fabulous Twirly Birds』へのオマージュである。これは彼にとって、もはや憧れの存在であるRandy Californiaによる作品だ。(CaliforniaはJimi Hendrixと共に活動していた存在。自身の息子を助ける際に大西洋で溺死している)LAで最も長く活動したロック・バンドであるThe Doorsからの影響も同じく否定できない。特に本作で多用されているローズ・ピアノを聞けば明らかだ。そして"405"の中で、Harveyはもう1つのLAの伝統について歌っている。そう、ドライブだ。この曲は車の混み合う南カリフォルニアの高速道路から名前を取っている。 本作はドラミングとギター・サウンドによって幕を開ける。『Widest Dreams』の制作にあたって、Harveyは無名のファンク・バンドを雇ってサイケデリック・ロックを演奏させ、たった4日で作品を仕上げている。言い換えれば、最も真剣に取り組んだ作品ではないということだ。くだらない歌詞であることも多く、"405"で歌われているのは、Harveyと一緒にドライブしている女性の話で、少しでも早く行って、途中でそこそこのサンドイッチを食べたいと言う彼女に運転を任せる、という内容だ。花びら占いのおまじないのようなコーラスが「彼女は俺を、好き、嫌い、好き...」と歌う中「彼女は俺を好きだ」という歌詞で全ての花びらをむしり取っている。他にも、Led ZeppelinがJ. R. R. Tolkienの一節を参照したのを真似て、"Rollerskates"では、サーファーの間で知られているマーメイドの謎について歌っている。 とはいえ、展開される演奏やプロダクション技術はなかなか壮観だ。ギター、ピアノ、そしてオルガンと、しっかりと左右にパンニングされ、十二分に与えられたスペースが輝いている。それはクラシックなサイケデリック作品と同様のテクニックである。"Riders On The Storm"のテンポで進む"Pleasure Swell"はゆっくりと焦がれるインスト・ナンバーで、シャッフルするリズム・セクションの上を行き交うギターが味わい深い。"Yes We Can Can"は、そのタイトルに名前が含まれているように、クラウトロック界の巨匠に対するオマージュだ。Jaki Liebezeitの千手観音ドラムをHarveyはなかなかの腕前で模倣しており、Canによる過激な作品『Ege Bamyasi』の形態が取られている。 DJを優先してもドラムスティックを置くことはなかったHarveyという、もう1つのリアリティが持つ視点、それが『Wildest Dreams』なのだ。現在のDJカルチャーの中で最もロック・スターに近い存在として、彼はその前線に立つ役割が似合っている。Jim MorrisonやJimi Hendrixのように、Harvey Bassettも"自由に生きるか、もしくは死ぬか"というライフスタイルを提唱している。Wooden ShjipsやThe Black Angelsといったバンドも同様の領域を追求しているが、今年、本作よりも素晴らしいサイケデリック・ロック・アルバムを見つけるのは困難を極めることだろう。たとえ、人々がこの手の音楽を買うことがなかったとしても、自国を離れた長髪のイギリス人は自らの道を歩み続けるだろう。我々の先を進み続け、カリフォルニアの夢を追い求めるのだ。
  • Tracklist
      01. Rollerskates 02. Boosh 03. Last Ride 04. 405 05. Pleasure Swell 06. Gypsy Eyes 07. Yes We Can Can 08. She Loves Me Not 09. Off The Lip 10. Scorpion Bay