Synthek & Audiolouis - Unwise

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  • ベルリンを拠点とするNatch Recordsはデジタル配信と並行して、5枚のアナログをリリースしている。デジタルとアナログのタイトルは独立したラインナップになっており、レーベル設立者であるSynthekとAudiolouisの2人による作品を聞くことが出来るのは現時点ではアナログ盤のみだ。SynthekことLuca LandolfiとAudiolouisことLuigi Cicchellaは共にイタリア・ナポリの出身であり、10代後半に市内の様々なクラブでDJをしている際に知り合ったようだ。2人はサウンド・エンジニアリングを学んだ後、2009年にSynthekはロンドンに、そして2011年にはベルリンに拠点を移し、Audiolouisも彼を追うように2012年にベルリンに移動し、同年、2人は友人でもあるMutecellと共にNatch Recordsを始動させる。以降、SynthekとAudiolouisは3枚のシングルを共同制作のもと発表し、王道的ともいえるリズムのしっかりとしたディープなテクノを展開してきたが、彼らのファースト・アルバムとなる『Unwise』では大きな変化が表れている。レーベルにとっても初のアルバムとなる本作には、これまでのストレートな4つ打ち以外の要素が多分に含まれており、異なる印象を与えているからだ。 彼ら自身も認めているが、2人はツール色の強いダンスフロアに焦点をあてた音楽を制作し、そうしたサウンドがフロアにどのような効果をもたらすのかを体験してきた。しかし、時間の経過と共に、ただ単に踊りやすいグルーヴを追求するだけではなく、同時に何か異なることを表現してみたいと考えるようになったようだ。Audiolouisはテクノ以外にもIDM、アンビエント、ダブといった音楽からの影響を受けており、それを抜きにしても、こうした表現の幅を求めるようになるのは至極当然のことと言えるだろう。そうして、自分自身のサウンドを見つめ直した結果生まれたのが『Unwise』というわけだ。彼らの求める変化と多様性を収めるという意味では、シングルではなくアルバムというパッケージを選択したのは正解だったように思う。収録曲が多くなることで表現の幅を提示する場所が生まれるからだ。また本作を通じて展開される起承転結のある豊かなストーリー性にも、単なるツール・トラックを制作することから逃れようとする彼らの姿勢が表れている。 これまで彼らがリリースしてきたシングル作品では聞くことの出来なかったノンビート・トラックによって『Unwise』はモノトーンな始まりを告げている。深遠な電子音が幾重にも重ねられていく"Miasma"から、"Intro:Spection"と"Overcast"での隙間を十分に取った非4つ打ちトラックへとつながっていき、2人がリズム構成においても幅を持たせようとしていることが分かる。そこからアルバムは"Broken Pad"と"Over The Edge"を通じて徐々に密度とテンションを増していき、"Thread Between Us"では、彼らのトレードマークでもあるストレートで疾走感のある4つ打ちトラックが展開している。後半に差し掛かるにつれ、エモーショナルなシンセとメロディ・ラインがトラックの主軸に置かれるようになり、特に"Something Else"では、AudiolouisのIDMからの影響がリズム要素の細やかなアレンジに表れており、所謂デトロイト・テクノの亜流で終わることのない彼らならではのトラックに仕上がっている。そして最後のトラック"Counterbalance"では、アシッドなラインに効果的に変化を加え、深く暗いフロアの中へと再び潜り込んでいく。 昨年の秋冬にかけて制作されたという『Unwise』には、Synthek & Audiolouisが狙いとしていた多様性が、ストーリー性、色彩、トラック構成と様々な形で表れており、結果として彼らの今の気分を捉えた非常に完成度の高い作品となっている。
  • Tracklist
      A1 Miasma A2 Intro:Spection A3 Overcast B1 Broken Pad B2 Over The Edge C1 Thread Between Us C2 Unwise D1 Lie To God D2 Something Else D3 Counterbalance