Archangel - The Bedroom Slant

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  • Bruno Pronsatoの作品に共通していることがある。活き活きとしたドラム・サンプルと細かなサウンドの断片を満載したマイクロ・ハウスという生態系を作り上げ、彼の作品は有機的に呼吸をしているということである。このスタイルはNinca LeeceとのPublic Loverだけでなく、彼が関わってきたほぼ全てのプロジェクトに一貫している。故に、同様のことがArchangelにもあてはまる。ArchangelはPronsatoによる最新プロジェクトであり、特にシンセ・ポップとポストパンクに影響を受けたものだ。『The Bedroom Slant』では、ベース・ギターを担当した彼の兄弟とアメリカ人コンポーザーであるPeter Gordonを含むアーティストたちによるアンサンブルが、複雑に絡み合ったPronsatoのソングライティングを導いていく役割を担っている。 本作はクラシックなポストパンクからの影響を受けているが、例えば、昨年のPronsatoのPulse Radioのミックスから想像されるような直接的な影響ではない。代わりに作品全体を通じて、彼は様々な方向性を感じさせる要素を少しだけ送り込み、前述の影響を自身の内側に吸い込んでいるかのような印象だ。Pronsatoと今回のパートナーたちは、しっかりとした手順というよりもラフなガイドラインをもとに、手探りで楽曲を制作している。時折、グルーヴが形成され、その後、空高くへと消えていき、わざと高く外した音程で歌うボーカルが、キャッチーなフレーズと奇妙で瞬間的なメロディを交互に生み出している。 所々ではフックとなっている場面がある。"To Be Seen"や"Momentum Of The Farce"がそうだ。他では、楽曲の構造が認識しにくいものもあり、Yonatan Leviの力強いダブル・ベースをフィーチャーしライブ録音したドリーミーなトラック"LA Teen"が、これにあたる。しかし、Pronsatoはこの両極にあるものを上手く活用している。"Julia"での鳥のさえずり、"The Future Kiss"のフルート、時には単なるドラム一発のサウンドなど、彼は微細な要素から耳に残るフレーズを生み出し、それを少しずつ使用するのが上手い。このアプローチは"Steal The Groom"において最も上手く機能している。ねばつくグルーヴは70年代中期のDavid Bowieのようであり、鳴き声をあげるホーンセクションと、ピンと張った弾力性のあるドラムを軸に、それ以外の素材があちこちへとさまよっている。他のトラック、例えば、ありのままにサウンドに興じ過ぎている感がある"You In Sin"のようなトラックと比べると、"Steal The Groom"には存在感と躍動感がある。 サウンドに興じるこうした感覚はPronsatoの音楽において最もそそられる点でもあり、最も欲求不満に感じる点でもあるが、それは今回の新プロジェクトにおいても変わっていないようだ。Archangelでは歌を軸に据えるフォーマットではなく、これまでとは異なる音素材を切り刻んではいるが、「The Make Up The Break Up」(英語サイト)のような傑作テクノに施した方法と同じものが、Archangelにも応用されている。過去のアルバムで見せていたハッキリとした嗜好性が『The Bedroom Slant』には欠けているのかもしれないが、Pronsatoがミニマル・ハウスのサウンドを根本的にマスターした今となっては、本作はこれからの未来が垣間見れるものと言っていいだろう。未踏の領域への一歩として『The Bedroom Slant』が確立されたものとなっていないのは理解できる。しかし、そのサウンドは完全にBruno Pronsatoであり、それだけでも一聴に値することを意味している。
  • Tracklist
      01. Half-Man Half-Lisa 02. To Be Seen 03. Julia 04. Come Undone 05. You In Sin 06. L.A. Teen (Live) feat. Yonatan Levi & David A. Powers 07. Momentum Of The Farce 08. The Future Kiss 09. Steal The Groom feat. Peter Gordon & Randy Jones AKA Caro 10. High Alarm