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Dimensions 2014
Published
Sep 11, 2014
Words
Ryan Keeling
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Dimensions 2014の中で最もドラマティックだった瞬間、それはフェスティバル自体とは全く関係のないものだった。日曜日の午後11時頃、今年で3回目の開催となる同フェスティバルのメイン会場である、19世紀に建てられた城砦プンタ・クリストは、激しい雷雨に襲われた。その頃、高い城壁に囲まれたステージの1つFort Arena 1では、Kaytranadaがプレイしていた。彼がDenzel Curryのヒップホップトラック“Threatz”をかけ、クラウドがワッと盛り上がった瞬間、空からは今まで見た事もないほどの激しい雨が降り始めた。そこから約2分間、ダンスフロアにいる観客達は悪天候に反抗するように踊り続けたのだが、突如バン!と、システムのジェネレーターが飛んでしまった。その場は混乱した雰囲気に包まれ、プログラムは全て中止となった。 その瞬間まで、Dimensionsでは絵に描いたような楽しい夏が繰り広げられていた。たった1時間前には、上半身裸の男性とユルいタンクトップを着た女性のカップルを筆者は見かけた。まどろんだ目をした2人は、Jeremy Underground Parisが放つスムースなグルーヴを聴きながら、手を組んで踊っていた。半分はUKから、もう半分は他のヨーロッパ各地からやってきたであろう参加者達は、週末中のんびりとしたムードで、真夏の太陽を満喫しているようであった。会場は、キャンピングエリアを含めても20分もあれば全体を回れるほどの大きさであり、人々は全部で8つあるアリーナを行ったり来たりしながら、安価なドリンク(例えばビール一杯は約500円であった)を片手に冗談を言い合ったりしていた。
フェスティバルの中でも、ボートパーティーは特に盛り上がりを見せた。木曜日から日曜日まで、毎日6隻前後のボートが出航していた。筆者はフェスティバルに到着後、まずはRA主催の3時間の船旅に参加した。出演者は、Anthony ShakirとMarcel Dettmann。2人とも、太陽が似合うDJとは言い難いかもしれない。Shakirはハウスやテクノ、エレクトロを矢継ぎ早にミックスするスタイルであり、Marcel Dettmannは言わずもがな、世界で最も有名なテクノDJのうちの1人だ。しかしどういうわけか、環境とサウンドのミスマッチが、逆にエキサイティングでもあった。自身のトラック“Arise”などをプレイしていたShakirは、微笑みながら独り言を言い、クロスフェーダーを使いまくっていた。そして間もなくボートが埠頭に着くという頃に、Dettmannが投下したFloorplanの“Never Grow Old”のニューバージョンがスピーカーから鳴り響き、大興奮した男達は甲板の上で踊り狂っていた(もし『Best Of Dimensions 2014』的なコンピレーションのようなものが存在するのであれば、このトラックは間違いなく収録されるだろう)。 土曜日の夕暮れ時に行われたFluxのボートパーティーは、もっとずっと陽気な雰囲気であった。Dan ShakeやAartektによるパーティー・フレンドリーな選曲に続いて登場した、ヘッドライナーのMotor City Drum Ensembleによるセットを聴いて、ハッキリと分かった。彼は、現在いるハウス/ディスコDJの中でも、トップクラスのDJであると。キラキラのグリッターを顔に散りばめ、アステカ模様の開襟シャツを着た女子や男達は、MCDEがSeven David Jrの“One”や、MKによるChez Damierの“Never Knew Love”のリミックスにフィルターをかける度に、狂喜の声を上げていた。
Dimensionsでは、ハッピーな音楽がとりたてて盛り上がりやすいのだが、ここは決してそれだけのフェスティバルではない。土曜日の夜、D-Bridgeは皆が待ちこがれていたExit Recordのショウケースを行い、彼が最前線で活躍し続けているジャンルであるドラムンベースの響宴を繰り広げた。 同日の夜Leisure Systemステージでは、DJ Stingrayが、エレクトロがいかに万能でダンサブルであるかを披露し、続いてPaul WoolfordによるSpecial Requestがクラシックなジャングルセットで登場した。Hessle Audioクルーがどれほど幅広いスタイルの音楽をターンテーブルの上に持ち込むかは、今ここで改めて説明する必要はないだろうし、彼らとL.I.E.S.とのジョイントショウケースは、やっぱり文句無しの内容であった。また、Kode9は、Scratcha DVAがクラウドを煽っている後ろで、フットワークトラックの数々をプレイしてみせた。一方、全く正反対のスペクトルではあるが、Metro Areaのライブパフォーマンスがキャンセルになった代わりに、メンバーであるDarshan Jesraniが素晴らしいディスコセットを披露してくれた。
しかし、筆者がこの週末一番楽しんだセットは、Malaによるものであった。このロンドン拠点のDJは、Dimensionsとその姉妹イベントOutlookの両方と、深い繋がりを持つ。彼が昨年のDimensionsで披露したMala In Cubaのショウは、おそらく彼のキャリアの中でも最高の出来映えだったかもしれないと本人が語っているほか(筆者の知る限り、少なくとも1人の人間が、実際にそのプレイを見て涙を流していた)、彼とCokiによるDigital Mystikzは、Outlookの毎年恒例のハイライトである。彼のパフォーマンスの間、ただでさえ恐ろしくもドラマティックなステージの雰囲気に追い撃ちをかけるように、照明は極限まで落とされていた。彼は約2時間に渡り、我々の想像を超える程ヘヴィーなクラブミュージックを鳴らし続けた。彼の顔は時折、ステージ上の機器から吹き出す炎に照らされ、そのステージの前のフロアではカオスが繰り広げられていた。 Malaのセットは、最高のサウンドシステムによってより一層素晴らしいものになっていたように思われる。グラスゴー拠点のダブ集団Mungo's Hi-FiはDimensionsとOutlookの両方に出演しているが、フェスティバルにあったどのサウンドシステムも、非常に音がクリアで力強かった。今年のDimensionsは、Martin AudioやVoid Acoustics、Noise Control Audioといったオーディオメーカーと協力しており、音響スタッフはアーティストのすぐ横に付いていた。これで、彼らがいかにオーディオに力を入れていたかが分かるだろう。
数々のライブアクトもまた、フェスティバルのハイライトであった。Jessy Lanzaは、タイトかつシンプルな心地よいパフォーマンスで、R&Bとディスコ、ハウスが融合した彼女ならではのサウンドを披露した。USの4人組インディーロックバンドWarpaintは、音楽性で言うとここでは仲間外れ感はあったものの、クラブミュージックの洪水の中では、ちょうどいい口直しのような役目を果たしていた。そしてメインステージに登場したRoy Ayersとそのバンドは、“Red, Black & Green”や”Everybody Loves The Sunshine”などの人気トラックを演奏しクラウドを喜ばせた。 週末中、最も皆が期待していたであろう2つのライブショウーUnderground ResistanceとAux 88は、日曜夜の悪天候の影響で残念ながら中止せざるを得なかった。RAがオーガナイズに携わっていたThe Clearingステージは浸水し、いったん会場全体が閉鎖された後にショウを再開できたステージは、ほんの一握りであった。参加者の多くはこの事実を受け入れ、嵐による被害はその夜の話のネタとなっているようにも感じられた。そう言いながらも、会場の雰囲気は暗くなっていたのだが、それも仕方のない事だ。空港までの移動の為、筆者は翌朝7時過ぎにもう一度会場を訪れたが、そこには灰色の固まりのような海と空があるだけだった。寂しげなレイバーが、どう考えても寒いだろうに上半身裸でヨロヨロと歩いていた。しかし彼は、この週末で最高の時間を過ごしたような表情を浮かべていた。
Photo credits: Dan Medhurst (header, Motor City Drum Ensemble, rain, crowd),
Marc Sethi
(DJ Stingray)
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