Venetian Snares – My Love Is A Bulldozer

  • Share
  • 明確な特徴を持ったジャンルの1つとして、ブレイクコアは常に多方面へと展開する化け物のような音楽であり続けている。このスタイルにはこうした本質があるため、ブレイクコアは他のジャンルを易々と吸収することが可能となり、ハードテックとジャングルをルーツとする狂乱したような攻撃性を一切損なうことなく、ブレイクコアならではのサウンドを生み出している。Venetian SnaresことAaron Funkよりも、この点を心得ている人はいないだろう。2005年の『Rossz Csillag Alatt Született』において彼が用いたネオ・クラシカルなサウンドによって、このアルバムはブレイクコアにおける最重要作品の1つとなっているし、これまでリリースしてきた他の作品でも、彼が単純明快なアプローチに対しても精通していることを表している。Venetian Snares名義として4年ぶりとなるアルバム『My Love Is A Bulldozer』においても、この点は特に明らかだ。 おそらくカバー・デザインから想像できるかもしれないが、『My Love Is A Bulldozer』は、非常に仰々しさのあるアルバムだ。もちろん、それが狙いなのだろう。基本的に、本作はブレイクコアによるミュージカルだと言っていい。全ての要素がありのままに用いられ、ぶっ飛んでいる。ストリングスとジャジーなブレイクによる"10th Circle Of Winnipeg"からアルバムはスタートし、Shirley Bassey風のボーカルが加えられることで完成している。ほどなくして、急激な動きを見せるベースラインとFunkによる怒涛のパーカッションへとトラックは展開していくが、ボーカルが持つ華やかな性質が失われることはない。本作全体を通じてジャジーなビートが用いられており、ドラム・パターンにおける一貫した素晴らしさがある。"Shaky Sometimes"が特にそのいい例だ。時折、挿入される紛れもないアーメン・サウンドがなければ、生演奏によるドラムだと思ってしまうことだろう。少なくとも最初の1分半は、お見事の一言だ。 本作を特にユニークなものにしているのが、Funk自身によるボーカルだ。驚きなのは全体的に見て、彼のボーカルが最も劇的な要素であるということである。"1000 Years"のようなトラックでの彼の歌声は、冗談を抜きにして、Les Misérablesのオーディションを受けているかのようでさえある。ドラゴンと魔法使いとの戦いについて語っている歌詞は、ストレートな狂いっぷりで、これが冗談ぽくアレンジされていなければ、恥ずかしいものになっていたことだろう。タイトル・トラック"My Love Is A Bulldozer"では「Only you can make my dick feel like this / お前だけが俺のアソコをこんな風に感じさせるんだ」という歌詞が何度も繰り返されているが、もしこの言葉が、ロマンティックな気持ちを誠実に語ろうとして言われているのであれば、この「おまえ」が誰であったとしても、その人物に対して申し訳ない気持ちになってしまう。トラックそのものは、本作のハイライトでもある。強烈な8ビットのバロック作品であり、メタリックなサウンドがもつれ合ったり、オペラの要素が飛び回ったりと、この2つの間をグラグラと展開していく。本作の大部分がそうだが、このトラックもかなりキている。 本作はFunkのベスト作というわけではない。しかし、駄作であるわけでもない。本作には物語というコンセプトであり、この点については間違いなく、しっかりと実現されている。待った甲斐があったか?と言われれば、筆者は「はい」と答えるだろう。だから、ブレイクコアのファンたちよ、恐れるなくてもいい。我らのどら息子が帰って来たのだ。ヤツは、これまでで最も素晴らしい状態にある。引きこもりのみんなも少しだけ明るい気分にならないかい?
  • Tracklist
      01. 10th Circle Of Winnipeg 02. Deleted Poems 03. 1000 Years 04. Your Smiling Face 05. Amazon 06. My Love Is A Bulldozer 07. She Runs 08. 8am Union Station 09. Shaky Sometimes 10. Too Far Across 11. Dear Poet 12. Your Blanket