Plastikman - EX

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  • 昨年、秋、Richie Hawtinは、Guggenheimの国際式典でプレイしてほしいと招かれた際、しっかりとそのオファーを受けている。社交界やセレブレティの観衆に、いつものHawtinのセットを披露するのではなく、安全策を取って、新しい素材を使ったアルバム並の作品を仕上げたのだ。具体的に言えば、Plastikmanの素材だ。Plastikmanということはつまり、Hawtin作品の最高峰に位置することを意味しており、陰鬱なテクノであるということだ。そして、この度、Muteが、そのときのセットをライブ・アルバムとしてパッケージすることになった。これは、2003年の『Closer』以来となるPlastikmanの新作と言える。一般的なLPよりも焦らすような内容を多く含んだ『EX』は、みんなが望んでいるものをしっかりと維持しており、Hawtinが、魅力的な初期作品を生み出していたときのような天才でなくなったわけではないことを証明している。 昔からのHawtinファンにとっては『EX』は驚くようなものではないだろう。しかし、"EXposed"での紛れもないシンセのメロディを聞くと、芯から興奮するのではないだろうか。『Closer』では、Plastikmanの世界観に洗練されたアレンジが加えられていたが、剥き出しでありながら素朴なサウンドの本作も『Closer』を彷彿とさせる。『EX』でも同様の素材が用いられており、303を紡いだサウンド、パタパタと刻まれるドラム・マシーン、そしてくすんだシンセによって、そうした要素の周囲に存在しているスペースを感じさせているのだ。おそらく、後にHawtinが大バコでプレイしてきたことが影響しているのだろうが、ミニマルなスタイルをもってしても、前述のスペースは非常に巨大で包み込むような印象がある。さもなくば、あちこちで吹き抜けるドラマティックなシンセは用いられているものの、イビザのフロアが静まり返るような内容になってしまうだろう。"EXplore"でのテック・ハウスなベースラインが弾む様や、"EXtrude"でのブーブークッションのような残念なベースラインに限っては、Hawtinが最近もっぱらプレイしているようなパーティーに迎合しているのではないか。 その他のトラックは、慎重かつ整然としており、頑丈なローエンドが用いられてはいるものの、抑制が効いている。"EXpire"では、弾け飛んでいきそうなほどのブリープ音や遊び心に満ちたハイハットが使用されているが、その狙いが上手く伝わってこない。一方で、綿密に作られたサウンドから反響音を搾り出しながら消え去っていくラスト・トラック"EXhale"は、本作のベストだ。クラシックなPlastikman作品に容易にフィットする内容だが、このエンディングには、どうしても物足りなさが残る。これは、ライブ時の環境が影響を与えた結果だろう。上品な式典(英語サイト)では、威圧的なものは出来ないからだ。 不満なのは、ちゃんとしたPlastikmanのアルバムではない『EX』を発表したことだ。スタジオ・レコーディングであれば実行することが出来たHawtinのポスト・プロダクション・マジックを期待するのは当然だし、Guggenheimのような一大イベントが彼にとってどれだけの意味を持っていたとしても、スタジオ・レコーディング作品に比べれば、それほどエキサイティングなものではない。10年ぶりとなるPlastikman作品には、大きな期待が寄せられていたし、どれほどソリッドに仕上がっているとしても、本作はその期待には及んでいない。本作の過程は、ちゃんとした食事を待っているのに、骨をしゃぶらされているようなものだ。
  • Tracklist
      01. EXposed 02. EXtend 03. EXpand 04. EXtrude 05. EXplore 06. EXpire 07. EXhale