Answer Code Request - Code

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  • Patrick Gräserのキャリアにおけるターニング・ポイントは2011年にやってきた。その年の夏の終わり、「Subway Into」という謎に満ちた12インチがHard Waxのホームページに現れたのだ。ブレイクビーツとテクノをブレンドしたダークなサウンドが収められ、中でも最も鮮烈だったトラックが"Escape Myself"だ。その作品の背後にいるのがベルリンのGräserだということが明かされるまでに、それほど時間はかからなかったが、当時は、まだ、ベルリン以外の場所ではほとんど知られていない存在だった。Gräserは、その後、「Subway Into」に続き、MDRから発表した2枚組シングルで高い評価を獲得している。今では、Ostgut Tonからリリースを重ね、Berghainのレジデントを務める彼は、Answer Code Requestとして、Marcel Dettmann、Tobias Freund、Ben Klockといったアーティストたちの仲間入りを果たしており、彼のデビュー・アルバム『Code』は、そんな状況を証明するような内容となっている。 過去数年間に渡って、Answer Code RequestのFacebookページでのジャンル欄には、"versatile techno / 多様性のあるテクノ"と記されている。この記述以上に『Code』を形成する12のトラックを的確に言い表す言葉はないだろう。Ostgut Tonから発表されている最近のテクノ・アルバムのほとんどが、クラブ仕様のテクノトラック(特に、Marcel Dettmann『II』がそうだろう)である一方、『Code』はアンビエンスとダーティーなブロークンビーツに重点が置かれている。Gräserのシングル作品同様、その雰囲気はどんよりとしているが、ざらついた空気の中では、激しく打ちつけられながら跳ね回るドラムと、これでもかというほど重いベースラインが、各小節ごとにリスナーを前へ前へと勢いづけている。 "Code"のイントロ部分、8秒が過ぎたところで低音が挿入されると、それ以降は、キックが打ちつけられるたびに、ロー・エンドでトラックが覆い尽くされている。この低音とキックのコンビネーションによる効果は、トラックごとに異なっており、"Blue Russian"の場合だと、唸り声を上げているように聞こえるが、"Field Depth"だと跳ね感があり、"Relay Access"の低域は非常に穏やかだ。こうした低域によって、各トラックの雰囲気に大きく影響を与えながら、微動だにしない不吉な世界観を確固たるものにしているのだ。 『Code』の中で最もシリアスではないトラックが、本作のベストにあたる部分だと言える。終盤に収録された"By The Bay"や"Thermal Capacity"は、それまでの殺伐としたトラックの対となるものを形成しているのだ。明るめのコードとスペーシーなサンプル素材が、ここにきて初めて用いられており、前半のガシガシとしたサウンドから距離を置いて一休みとなる場面を提供している。こうした印象における変化にも関わらず、疾走感のあるロー・エンドはそのまま使用されており、Gräserの音楽観における低域の重要性をいっそう強調している。『Code』はベース・ミュージックのアルバムなのではない。かといって、テクノであるというわけでもない。Gräserがそのどちらにも属していないことが素晴らしいのだ。つまりは、本作で披露されているその"幅"が突出しているということだろう。
  • Tracklist
      01. Code 02. Blue Russian 03. Field Depth 04. Odyssey Sequence 05. Zenith 06. Relay Access 07. Status 08. Haul 09. Spin Off 10. By The Bay 11. Axif 12. Thermal Capacity