Taicoclub ’14

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  • 山々の深い緑に囲まれたロケーションで行われるこの野外音楽祭、Taicoclub。2006年より長野木曽郡木祖村のこだまの森で行われて今年で9年目を向かえた。今回の開催日は5/31(土)〜6/1(日)。今回私にとって初めての参加であったが、友人達からの噂どおりとても素晴らしいフェスティバルであった。東京都内からバスに乗ること約4時間。大自然に囲まれたこの会場は、先ほどまで都会にいたことを忘れる最高のホリデー・ベニューである。リストバンドを手に入れ、歩くこと約5分。特設ステージでは最初のアクトMoodmanのDJが中盤を向かえ、盛り上がりを見せていた。既に所狭しとテントで埋まっているキャンプサイト。特設ステージから遠くない場所を確保し、さっそく会場を探索する。多国籍な食べ物や飲み物、さらにはマーチャンダイズなどがあり不自由なく楽しむことができる。入り口で配布されたタイムテーブルにはエリアマップも記載され、初心者にも分かり易い。DJが終わると同時にスタートした轟音ドラム&ベース・デュオ、Lightningboltのライヴセットは、ステージではなくフロアで行われるのが彼らのスタイルのよう。メインスピーカーから聴こえてくるエネルギッシュなサウンドは80年代初期ハードコアを連想させられる。少し残念であったのが、オーディエンスに囲まれ彼らのパフォーマンスがほとんど見えなかったこと。個人的な意見であるが、もう少し高さのあるスペースでパフォーマンスをしてほしかった。もしくは、ステージ上にスクリーンモニターがあれば良いな、と感じた。 もう1つのステージである野外音楽堂へ足を伸ばす。サウンドチェックが入念に入りスタートした、くるりのライヴ。辺りを見回すと、いつのまにやらフロアは大勢の観客で満たしていた。名曲“World's End Supernova”、そして“ばらの花”などの選曲により、一気に会場はヒートアップ。グルーヴィーでクリアな彼らの音楽はロック好きだけでなくクラブミュージック好きをも魅了し、さすが経験とキャリアがあるな、という印象。特にこのような空気のすみとおった会場で聴く彼らの音楽とリリックは格別であった。特設ステージでのサカナクションの演奏をバックグラウンドにテントで一息。エネルギッシュでエモーショナルかつモダンなテクノ要素を取り入れた、面白い日本のロックバンドである。ふと空を見上げると、グリーンレーザーの照明が真っ暗な空に浮かぶ星と混ざり合い、彼らの音楽が空にとけ込むかのようクラブ的空間を演出していた。うってかわって野外音楽堂ではThurston Mooreのライヴが始まっていた。言わずと知れる90年代オルタナティヴ・ロックバンドSonic Youthのギタリストである彼の、メロディアスでエモーショナル、ゆるいギターをかき鳴らす演奏を聴きながら、少し休憩をとる。このような種類の音楽を演奏する人は今の時代少ないからこそ、改めて90年代サウンドの価値を実感した。パフォーマンス終了後は少し間があき、スチャダラパーが登場するやいなや会場の空気がまた変わる。時代が変化する中で、地に足をつけて長年活動しているこの日本のラップ・グループには本当に感心させられる。彼らの新曲や、“From 喜怒哀楽”、そして不動の“今夜はブギーバック”まで年齢層に関係なく楽しめるパフォーマンスと彼ららしいMCで観客を魅了した。 午前2時を向かえ、特設ステージではJon Hopkinsが登場。ダークなメロディー、リズミカルなドラム、ベース、プログレッシヴ、テクノを全てバランスよく取り入れた彼の音楽はストーリー性のあるもので、1時間のセットリストは短いと感じた人も少なくはないはずだ。バックグラウンドのヴィジュアル映像とブルーのライティングもまた調和しており、予想以上に楽しめたそのパフォーマンスは、ライヴで体感すべきモノであると思った。個人的な目玉の1つであったDBX a.k.a. Daniel Bellによるライヴが薄暗い夜明けと共にスタート。この時から元のサウンドシステムに加え、DJモニターが登場。ステージ中心にはマイクがセッティングされており、エフェクトをかけたダニエル自らのボーカルから、限りなくミニマルで堅い音と共に緩やかにスタート。硬くて濃い音と太いキック、そしてどこか落ち着く安定感ある彼のプレイによりダンサー達がじわじわとフロアに集まりはじめる。ちょうど日の出が出てきた頃、これまたミニマルかつ高揚感があるハウスを織り交ぜたサウンドでオーディエンス達を終始心地よく踊らせてくれた。続いてこのパーティーを引き継ぐのはUKからのテクノユニットThe Black Dogである。工業地帯であるイギリス中部にあるシェフィールド出身の彼ら。80年代後半に結成され約25年、デトロイトかつインダストリアル・UKテクノサウンドからは経験とキャリアの豊富さを感じ取れた。 予定開始時間よりやや早めに始まったAkufen。この頃には日差し全快、気温もかなり上昇。ジャズ、ディープハウス満載の美しい、朝にピッタリな多幸感溢れるセットリストを披露。昨年Perlonからリリースした彼の別名儀Horror Inc.によるアルバム『Briefly Eternal』、そのジャズ感を思い出させてくれる、AkufenことMark Leclairによる選曲であったと言えよう。もちろんジャジーなハウスだけではなく、UKガレージからハイハット全開のテックハウスなども織り交ぜたバランスのとれたセットリストであり、気持ちよく踊れる満足のいく3時間であった。野外音楽堂で最後を飾るのは、Nick The Record。ソウルフルでリズミカルなディスコ、ラテン、ハウス、テクノ、ファンクをスムーズにつないでいく彼のプレイは、さすが毎年クローザーを飾っているだけある、と感心。まだまだ踊り足りないオーディエンスのアンコールにも、サーヴィス精神旺盛なニックは笑顔で答えてくれた。そんな彼独特のスタイルとも言えるDJセットは飽きさせることのない、子供から大人まで楽しめる理想的なパーティーの締めくくりとなった。 この音楽祭での素晴らしい点は、各ステージのライティングやデコレーション、そしてサウンドシステムなどの“空間演出”がより会場を彩っており、質の高い雰囲気を作り出すことへのこだわりが見受けられたことである。特設ステージのサウンドシステムは去年よりもパワーアップしVoid Acousticsを採用したようだ。さらに今回、両日ともに天候に恵まれ、来場した多くの人達にとって充実した2日間となったであろう。そんな優れた環境と音楽に囲まれ、自分のペースで思いっきり楽しむことができたのは言うまでもなく関係者もといオーガナイザーの方々のおかげである。来年で10年目を向かえるTaicoclub。ここ、こだまの森でまた素晴らしい体験をできるのだと思うと今から既に待ち遠しい。