Abdulla Rashim - Unanimity

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  • 3年前に初登場して以降、スウェーデンのアーティストAbdulla Rashimは、質感豊かで自由な方向性を持ったテクノ、という自身のサウンドの普及に努めてきた。彼の最後の作品は、2013年後半、自身の名を冠したレーベルからリリースした6曲入りのソロEP「Aksum」だが、以前にも増してアルバムのような流れがある作品となっていた。時を同じくして、彼の友人でもあるVargがUlwhednar名義でプロデュースした3枚の実験的作品もリリースされているが、そのどれもがRashimの新レーベルにしてより多様性のある音楽を展開するNorthern Electronicsから届けられている。そのNorthern Electronicsでのアルバムとなる本作『Unanimity』では、リズム上における催眠性と感情的な訴求力に溢れる世界が繰り広げられている。 躍動感のある密度の濃いドラム・パターンと、見事に変化をつけた際立つハイハットや高域成分にスライスしたヒス・ノイズを用いるなど、リズムに執拗なまでにフォーカスしてきたのがRashimの音楽だ。しかし、彼の作品に漂うメランコリーな雰囲気は、『Unanimity』では、より主張力のあるものへと増大していき、時折、悪意に満ちた力へと発展している。"Under This Wasted Sky"での鼓動するディストーションでスタートする瞬間から、この点を感じることが出来るだろう。幻聴を聞いているかのような鳥の鳴き声がこだまする"No Borders"や、最後から2曲目の暗黒トラック"Nothing Existed"のようなビートレスな物語を通じても同様のことが言える。 膨れ上がっていく空気を漂わせるこうした要素は、アルバムの残りの部分においても上手く用いられており、Rashimの最近の傾向でもある比較的短めのトラックを展開させつつ、タフで複雑なリズムを考案され続けていることが分かる。その結果、現在のシーンに蔓延している深みなく盛り上がりを煽るだけのトラックなど話にならないほどの音圧を持つ作品が生まれ、スリリングな多様性が展開されている(CLRやElectric Deluxeからの最近の作品と比べてみてほしい。)"Red Uprise"では、わびしく長いため息が雲のように立ち込める中を浮上していくドラムがパチパチとほとばしり、一方の"Moral Blinds"では、上手くコントロールした上でメルトダウンを発動させている。本作に収録された3拍子のトラックの内の1つであるこのトラックは、ぐつぐつと煮えたぎるアシッド音と異世界からの叫び声が渦巻く中、規則正しく刻まれるハイハットが、トラック上に安全地帯を作り上げている。 しかし、実際に『Unanimity』を1つにまとめ上げているのは、トラックのタイトルがほのめかすサウンドの進化過程とカタルシスだろう。そうした要素がドラマティックな最後の瞬間まで持続されているのだ。"No God"での啓示を受けたような激しさと、"Nothing Existed"における憂鬱な雰囲気を潜り抜けた後、遂に待ち受けているのが"Unanimity"だ。噴き出すように鋭いリズムの塊と、遠くから聞こえる嘆き声によって、爽快な結末を作り上げている。9トラック全部で45分強の『Unanimity』は決して安易な場所に長居することなく、絶え間なく前へと進んでいく勢いを感じされる。ディープでヒプノティック、そして冒険的なテクノが好きであれば、本作を逃してはならない。
  • Tracklist
      01. Under This Wasted Sky 02. Path Inwards 03. Red Uprise 04. No Borders 05. Moral Blinds 06. Afar Depression 07. No God 08. Nothing Existed 09. Unanimity