Tobias. - A Series Of Shocks

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  • Tobias Freundの音楽について、ついつい話をしてしまいがちになる。スタジオ・エンジニアである彼はMilli VanilliからMarcel Dettmannまで様々な人のために機材のノブを操作してきた。これは純粋にサウンド・クオリティの面においての話だ。彼が最後に発表したアルバム『Leaning Over Backwards』(英語サイト)と同様、『A Series of Shocks』もまた豊かであり空間表現という点で意欲的な作品となっている。調整されたダークなキックがぶくぶくと泡立ち、波打つベースによって構成されている低域部分の音圧がフィジカルにリスナーの胸を押し付ける。クラップ、ハイハット、そして水が滴っているかのようなシンセ音が空中へと浮かび上がり、星空に向かって旋回していく。これは巨大なテクノだ。ワイドなスクリーンで3Dの音像を持ち、クリーンかつピュアなのだ。 Freundが昨年、Beatportに対して語っていた(英語サイト)「オーディオ・マニア並の精度の高さと組み合わせた一定のラフな感覚」を持った特長的なサウンドは強烈な効果を持っており、鬱蒼とした"Fast Null"やトリッピーな"Heartbeat"といったトラックのようなベーシックなトラックでさえも、説明不可能なほどエキサイティングな響きへと変化させている。しかし、Freundならではの密度の濃い細かなディテールに比べれば、そうした圧倒的なスケールの大きさは突き詰めれば、それほど重要ではないだろう。この点こそ、彼の音楽を家で聞いても心地いいものでありながら、ダンス・フロアでは心臓が張り裂けそうになるほどの興奮を与えるものにしているのだ。この点においては、武術を彷彿とさせる"Ya Po"での延々と続くアルペジオによる恍惚感はお家芸とも言えるベルクハイン・クラシックスと言えるものだろう。 きらきらと輝くアルペジオ・シンセによるメロディが最前面に押し出されていることで、本作には『Leaning Over Backwards』よりもさらにハッキリとした印象を与える場面がある。華麗なトラック"He Said"や、nsi.でのパートナーMax Loderbauerとの共同作であるTangerine Dream風の"Entire"をチェックすれば、このことがよく分かるはずだ。しかし、それ以外のトラックでは、いつものFreund作品とは異なっており、異常なまでに細部まで作りこまれた伝統的なテクノが本作には収録されている。レフトフィールドなファンクネスが渦巻く"If"を引っ張っているロックなリズムは、その分かりやすい例だと言えるだろう。シンプルかつ、ぐちゅぐちゅとアシッドなサウンドが展開する素晴らしいトラック"Instant"は、精巧に作られたブリープ音と波状に広がるサウンド、そしてFreundが頻繁に使用する幽体のような声の断片によって、見事な浮遊感が与えられており、トラックの質感、雰囲気、リズムの切迫とした緊張感を重ね合わされている。これぞ、Freund、極上のテクノ・スタイリストのサウンドだ。
  • Tracklist
      01. Entire (CD only) 02. Heartbeat 03. Testcard 04. Instant 05. Ya Po 06. The Scheme Of Things 07. He Said 08. Cursor Item Only (CD only) 09. If 10. Fast Null