The Clover - Processes

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  • ハウス・ミュージックの歴史は30年に及んでいるかもしれないが、ハウス・ミュージックのアルバムがいかにあるべきか、という問いに対して、その答えはいまだに見つかっていない。アルバムという形式はハウスというジャンルには向いていないという人がいるかもしれない。しかし、レフトフィールドなプロデューサーのマイノリティとして好例であるThe Cloverは、こうしたジレンマを気にしてはいないようだ。このフィレンツェの3人組は優雅に展開する物語性に溢れるアルバムを作り上げることが出来る。まるで、見事に構築されるDJセットのように。『Processes』では、陶酔しそうなほどサイケデリックなハウスが奏でられ、彼らのサウンドが多様に繰り返される世界へと聞く者を導いていく。 1曲目"Black Hole"ではThe Cloverの最もぶっ飛んだ一面を感じることが出来る。ステレオの残像の中を斜めにスライドしているかのようだ。"The Gash"ではグライム的なチープなパーカッションとずるずると滑りながら唸りをあげる低域がローファイ感を生み出している。San Properによるビートがつんのめるようにバラバラになっていくコラボレーション・トラック"Break 4 Luck"も同様にローファイだ。これぞ『American Noise』以降のハウス・ミュージックではないだろうか。素材は削ぎ落とされ、ロウで、たまらなく狂っている。 『Processes』は沼のようにぬかるんだ荒々しい世界からスタートするものの、洗練された一面が突如として現れる。"Phoenix"に至るまでに、序盤のトラックから感じられるジャズ、ディスコ、そしてファンクからの影響はよりしなやかなものへと組み合わせられていく。それを成し遂げるための魅力的な内部回路がここには存在しているのだ。キラキラと飛び込んでくるピアノの音、水面で響き渡るギター、ファンクネスに満ちた弾むベースによる"Glimmer Of Light"は、昔のSadeのトラックを巧みにリエディットしたかのようにさえ聞こえる。以降、作品はトラックのテンポが再び速まり、フリーキーな要素を見事に取り込んでいる。"Dorf"や"Rolling Down The Hill"では、Parliamentやクラウトロック、ミニマルテクノ、そしてアシッドハウスの要素を等しく内包した滑るようなコズミック・ファンクを披露している。本作を聞けばThe Cloverのライブを見たくだろう。作品としての魅力と自信に満ちた稀に見るアルバムだ。この作品を紐解いて、ぜひとも楽しんでみて欲しい。
  • Tracklist
      01. Black Hole 02. The Gash 03. Jungle Man 04. Break 4 Luck feat. San Proper 05. Phoenix 06. Celestial Fog 07. Glimmer Of Light 08. Dorf 09. Rolling Down The Hill 10. Orange Dreams 11. Kites (Digital Exclusive) 12. A Slide On Your Skin (Digital Exclusive) 13. The Cage (Digital Exclusive)
RA