Various - Air Texture Vol. 3

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  • ニューヨーク在住のJames Healyによるアンビエントレーベルと同名のコンピレーションシリーズ『Air Texture』はCDという形ではなくどこかのギャラリーで展示されるべきものだと思う。収録曲はミックスされていると言うよりも、今回の場合だとDeadbeatとDJ Oliveによってキュレーションされていると言え、各展示(各コンピレーション)にはジャケットデザインに現代アートが用いられている。本作では、やしの木と太平洋を臨む空間が採用され、一見すると数多あるチルアウト系のコンピレーションの見えなくもないが、実のところ、これは芸術家Robert Irwinによるインスタレーションの1つだ。空間を写した単なる二次元の壁紙として終わるのではなく、『Air Texture Vol.3』がしっかり深みを持った作品であるのなら、このジャケットは中々に調和することだろう。 Irwinのインスタレーションがそうであるように、何を見ようとしているのかを意識していなければ、ここに収録された音楽は何の意味も持たない。Raz Mesinaiによる"Go Figure Skating"を聞いている間は、張り詰めた空間を台無しにしてしまわないよう息を潜めていなければいけないと感じるほど、そこには静寂の美学がある。多くのコンセプチュアルアートがそうであるように、文脈を理解することが大事だ。『Air Textue Vol.3』が行おうとしているのは60年代にニューヨークで活動していた実験アートのパイオニアが現在ベルリンを拠点に活動するエレクトロニックミュージックのプロデューサーにどのように影響を与えてきたのかを提示することだ。この点を踏まえるとRicardo VillalobosとMax Loderbauerによる"Pianofrap"はJohn Cageのプリペアド・ピアノを用いた作品群へのトリビュートとして紐解くことが出来る。 各アーティストの歴史を前もって知っておくことで新たな見解を持つことが出来る。Evynid KangがSunn O)))による黒曜石のように漆黒のドゥームメタルに携わったことがあることを知るものにとっては、"Petrified Wood"の長閑な雰囲気は驚きとなるかもしれない。同様にThomas Fehlmannによる"Embrace"での骸骨がカタカタと音を立てているかのような雰囲気から察するに、このタイトルは死の宣告を表している。もっともBlue Fieldsが眠気を誘う"Open Your Eyes"に「Wake up!(起きろ!)」という声を用いたように、もしくはMarina Rosenfeldが自身の作品を"A Track (With Beats)"と名付けたように、それと同様の皮肉めいたユーモアをFehlmannが取り入れているなら話は別だが。しかしながら、こういった一切のコンセプチュアルな一面を拭い去ったときにこそ、音楽そのものと同様、フーガを聞いているようなトランス状態を体験することが可能となり、『Air Texture Vol.3』はその真の美しさを見せるだろう。
  • Tracklist
      CD 1: Deadbeat 01. Deadbeat - Laura Solaris 02. SHRUBBN!! - Echo 8|4 03. Loops of Your Heart - Like a Wolf 04. Blue Fields - Open Your Eyes 05. Ricardo Villalobos & Max Loderbauer - Pianofup 06. Hrdvsion - The No Face 07. Tobias. - Subterranean 08. Jacopo Carreras - Violinic Drumming 09. Thomas Fehlmann - Embrace 10. Pole - WipfelDub 11. NSI. Non Standard Institute - Violant 12. Exercise One - Toy Park 13. Tom Thiel - Frida 14. Deadbeat - Primordian Waves CD 2: DJ Olive 01. Phil Niblock - Bells & Timps 02. Ikue Mori - While Sleeping 03. Pauline Oliveros - Cows, Cows, Cows! 04. Jim O'Rourke - Low Bow 05. Fennesz - Vallado 06. Marina Rosenfeld - A track (with beats) 07. Oren Ambarchi - Rhubarb 08. Evynid Kang - Petrified Wood 09. Andris Brazus - Étalé de tout son long 10. Raz Mesinai - Go Figure Skating 11. lloop - a bit more than a digit 12. DJ Olive - One Day Old 13. Once11 – Whatawind 14. Multipolyomni – Titicaca Moon (Digital Bonus)