Korg Volcaシリーズ

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  • ダンスミュージックの制作に興味がある人ならば、今年初頭から噂になっていたKorgのVolcaシリーズに興味を持っていたはずだ。Beats、Bass、Keysの3種類が展開されているこのシリーズは、お互いに多少オーバーラップする共通点を持つにせよ、基本的にそれぞれがその名の通りの機能を果たすようになっている。尚、このシリーズの共通点は「Volca」という名前だけではない。3機種共に同じサイズ、同じ重量、そしてバッテリー駆動となっている(バッテリーは同梱)。バッテリーの駆動時間は10時間だが、操作をしないまま4時間が経過すると自動的にパワーオフとなるため、スタジオで長時間使用したいという場合は別売りのACアダプタ(9V)を購入した方が良いだろう。 各VolcaにはMIDIイン、そしてSyncイン/アウトが備わっている。尚、Sync用のミニジャックケーブルが同梱されているため、すぐにVolca同士を接続することが可能で、これによって内蔵シーケンサーやLFOのスピードを同期させることが可能になる。また、各Volcaはフロントパネル上部に各種コントロール、パネル下部はキーボード/シーケンサー、そしてファンクションキー(Func)との併用でアクセス可能となる各種機能が配置されており、すべて共通のデザインとなっている。つまり、1台のVolcaを扱えるようになれば、他の2台も扱えるようになるという訳だ。また各Volcaにはスピーカーが内蔵されている。当然これはVolcaの豊かなサウンドを楽しむには不十分だが、移動先での制作や試聴には十分と言えるだろう。 まずはVolca Beatsを見ていこう。ドラム・パーカッション音源であるVolca Beatsの音源はハイブリッドで、キック、スネア、タム、ハットがアナログ、そしてクラップ、クラベス、アゴゴ、クラッシュはPCMとなっている。各アナログ音源は3つのパラメータを変化させることが可能で、例えばキックはクリック、ピッチ、ディケイがコントロールできる。これらのパラメータを上手く組み合わせることで、テクノ風の固いキックから、ディケイの長い808のキックのようなサウンドを生み出すことが可能だ。またスタジオモニターに接続すれば、音圧が十分にあることも理解できるだろう。スネアは909のようなスナップ調整が可能なため、様々なテイストのスネアを生み出すことが可能だ(筆者はクラップとの組み合わせがベストだと感じた)。尚、PCMのパラメータはアナログよりも少なく、PCM Speedダイアルでサンプルの周波数を調整し、ピッチと長さを変化させる。この部分を欠点と捉える人もいるだろうが、このダイアルだけでも十分に使いやすいサウンドの生成が可能だ。尚、Part Levelダイアルを使用すれば、すべてのパートのミックスバランスが調整できる。 Volca Beatsのシーケンサーは非常に楽しく、自分好みの方法でビートメイクが行えるようになっている。リアルタイムレコーディングはメトロノームがなく、そのため下部のシーケンサー部分のLEDの点灯を目で追っていくしかないので、リズムを最初から組んで行こうという時にはやや不便な印象を持つかも知れない。しかし、簡単にビートを組みたいという人には、2種類のステップレコーディングが用意されている。各パートを選択してシーケンスポジションを指定するだけのシンプルな方法か、Partボタンを使ってシーケンスグリッドを移動し、ステップごとに鳴るパートを指定していく方法があるが、後者は予想できないワイルドなパターンを作りたいという人に向いているだろう。 尚、シーケンサーはパラメータの動きもレコーディングできるため、リアルタイムな変化をパターンに組み込むことができる。その際に重宝するのが、パネル左上の2個のStutterダイアルだろう。これは基本的にはディレイのように聴こえるが、正確には自分の好きなタイミングで個々のサウンドのディケイをリピートさせる機能で、Timeはリピートの間隔をコントロールし、Depthでは各リピートと回数と大きさをコントロールする。 Volca Bassのデザインと色使いはRolandのTB-303に対して敬意を払ったものと言えるが、サウンドは303のそれとは異なっており、その差はKorg独自のフィルターに拠るところが大きい。Bassで採用されているフィルターは往年のKorgフィルターで、1974年に発売されたminiKorg700sと同じものが採用されている(Volca Keysにも同じフィルターが採用されている)。この12dBのローパスフィルターがベースシンセに採用されたのは今回が初めてだが実に効果的で、強烈なベースサウンドを欲している人は間違いなく満足するだろう。Volca Bassのサウンドエンジンは3基のオシレーター(VCO)となっているが、この3基のオシレーターは3通りに組み合わせることが可能で、3基それぞれを独立させるか、オシレーター1と2をひとつとして扱ってオシレーター3を独立させるか、または3基をひとつのオシレーターとして扱うかが選択可能となっている。3基を完全に独立させると、各オシレーターが連携を取りながらも、それぞれで異なったサウンドメイクとシーケンスが可能になるため、非常にディープなサウンドやフレーズが生み出せるようになる。尚、オシレーターごとのチューニングとピッチレンジ(Octaveダイアルか外部MIDIキーボードを使用する)は非常に広く、ベース以外にも使用できる。また前述のフィルターは非常に強力なため、レゾナンスを強調すればスピーカーから驚くようなサウンドが聴こえるはずだ。またBassにはLFOとエンベロープ・ジェネレーターも備わっている他、各機能の動作状態やシーケンスがLEDの点灯で確認できるようになっている。 ポケットサイズで十分な機能を備えたシンセを探しているという人にとって、Volca Keysは無視すべき存在ではない。この機材の素晴らしさは豊富なプレイバックモードにある。尚、各モードで使用する波形は固定されているため、モードの選択が全体のサウンドを大きく左右する。たとえばPolyモードでは、各オシレーター(3基)の波形はノコギリ波に固定されており、UnisonとPoly Ringモードでは矩形波を使用する。また、サウンドエンジン部のパラメータの多さはVolcaシリーズ随一となっており、4つのセクション(VCO、VCF、LFO、エンベロープ・ジェネレーター)にはそれぞれ3つのパラメータが備わっており、計12個のダイアルをコントロールすることが可能だ。フロントパネル左側の黒いダイアルでプレイモードとオクターブを選択すれば、サウンドのエディットを瞬時にスタートさせることができる。パネル右側にはTimeとFeedbackのダイアルを備えたDelay(Volca BeatsのStutterとは構造が異なる)セクションがあるが、ここはMIDIまたはSyncに同期させることが可能だ。尚、内蔵シーケンサーは他の2機種とは多少趣が異なり、メトロノームがついているものの、BeatsやBassのようなステップモードは搭載されていない。このため、フロントパネルのキーボードを使った演奏に気を配らなければならないが、Volca Keysのキーボードには黒鍵が用意されており、他の2機種よりも大きなスペースが割かれている。またシーケンスのレコーディングの他に、モーションレコーディングも可能なため、レゾナンスダイヤル以外の各パラメータのリアルタイムレコーディングが可能となっている。尚、プレイバック時には、レコーディングされたパラメータのLEDが点灯する。 Korgはこのポケットサイズの機材においてすでに高い評価を得ているメーカーだが、VolcaシリーズはこれまでのMonotribeやMonotronシリーズを完全に上回った存在と言えるだろう。魅力的な価格設定、強力なアナログサウンド、シーケンスとパラメータのリアルタイムレコーディング、携行性、同期性能などVolcaシリーズは様々な面で優れている。また3機種すべて集めても大した出費にはならないので、1台だけ買って、他の2台を貯金して買うことになっても、そこまで時間はかからないだろう。1台だけでも、3台一緒でも、素晴らしい働きをしてくれる機材だ。 Ratings: Cost: 5/5 Versatility: 4.5/5 Sound: 4/5 Ease of use: 4.5/5