Cabaret feat. Daniel Bell

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  • 都内ではトップクラスの音響を誇るクラブ/ライブハウスUNITと、階下のバーラウンジSaloonを拠点とする、国内におけるテクノ、ディープハウスパーティーの代表格CABARET。時代の変動に左右されない強固なスタンスと開拓精神を持ち続け、メンバーを入れ替えつつ現在はdj masda、KABUTO、Kazuki Furumiの3人によって構成されている。2013年に入ってからは新たな試みとして、オフシュートパーティーa Leap of Faith EditionにてEli Verveine、Bihnといった欧州の実力派ローカルDJを招致した。また、レーベルとしても活動も開始し、CABARET設立者のひとりであるSo Inagawaの作品「Logo Queen」をリリース。2000年から続くこのパーティーの最盛期と言っても過言ではない充実ぶりである。そんなCABARETは今回Daniel Bellを招致。デトロイト、ベルリンを拠点に活動し、唯一無二のグルーヴを生むミックスの手腕とただならぬヴァイナルへの造詣の深さでカリスマ的な人気を誇るDJだ。9年連続の共演とのことで、特別な夜となることを期待せずにはいられない。さらに関西の地下シーンでもトップの実力を持つyoshikiが参戦。彼も長年CABARETにゲストとして参戦してきたDJだ。どれだけこの両者にCABARETクルーが信頼を置いているかは想像に難くないだろう。 メインフロアのUNITからパーティーが開始、dj masdaはアトモスフェリックなフレーズのハウスとシンプルかつファンキーなトラックを使い分け、フロアを着実に暖めていく。同系統のサウンドが重なりあうごとに味わいが増し、艶めいていくような感覚は、彼の特色と言えるもの。この日UNITの照明を担当したのは、dj masdaとはelevenのクロージングなど様々なパーティーで共演してきたMotoki Takahashi。また、大箱小箱、野外パーティー問わず様々なプレイスのサウンドデザインを手がけてきたHIRANYA ACCESSのKOHJI FUJITAも参加し、いつにも増して磨き上げられた音響と、Motoki氏による、楽曲を効果的に彩るライティングがパーティーをサポートした。SaloonではKazuki FurumiがDJを開始。地を這うようなビートダウンから徐々に浮上していくような選曲。丁寧な展開の中にもどこかワイルドでラフな要素が見え隠れしていた。続くyoshikiは聴衆を酔わせるような予想不可能でダークな風合いのグルーヴ。遊び心とフリーキーさが存分に感じられるプレイに、没頭してしまうオーディエンスも多かった。時を同じくしてdj masdaによって十二分に暖められたフロアにDaniel Bellが登場。更に危うさと安定感を増していくような、相反する要素を持ちあわせたディープグルーヴを披露した。彼のDJを聴きこむと、ただ類似した楽曲をかけ続けるというだけではなく、様々なジャンルの感覚を取り込み、結晶化しているのがわかる。それは彼の拠点デトロイトのテクノにも通ずる姿勢だ。一方SaloonではyoshikiからKABUTOへバトンタッチ。彼もデトロイトからの影響を感じさせるDJだが、メインに比べるとよりテクノ的な、ストレートかつうねりのあるプレイでフロアに更なる勢いをもたらしていた。 渋好みのテクノ、ディープハウスで統一されたパーティーでありながら、メインとラウンジ(Saloonは所謂ラウンジスペースとは違った特性を持ったフロアではあるが)でそれぞれのカラーが色濃く表現されていた。yoshikiの混沌としたミニマルと比べるとDaniel Bell はフラットで秩序立った展開のハウスで、またDaniel Bellの淡々とした何処までも続くようなグルーヴに食傷気味な人々はKABUTOの力強くタフなグルーヴで楽しめる、というように二つのフロアが上手く補完し合っているため、飽きること無く楽しむことが出来た。Daniel BellはAshraの“Sunrain”のエディットとおぼしき美しい楽曲でアンコールに応え、ラストは予想外の特大ダンスクラシック、Chicの“Good Times”をプレイ。観衆のボルテージを最高潮に保ったままこの日のメインフロアを締めくくった。その後は興奮を引きずったままSaloonを担当する3人によるB2Bを堪能。ずばぬけて独特な、マッドな感性が光る選曲をキープするyoshiki、対するKazuki Furumiも奮闘、KABUTOは両者のバランスをとりつつも高い技術をもってアクセントを加える。長年のキャリアに磨かれた二人の超個性と渡り合うKazuki Furumiの手腕には、今回も驚かされた。久しく味わっていなかった、半日近い時間が一瞬で過ぎ去ってしまう強烈な体験であった。 総勢5名のアクトでUNIT/Saloonを使用するという、成熟したパーティーにのみ許される贅沢は、3時間近いロングプレイでのみ生み出すことができる濃厚な音空間を実現した。これだけの実力と決断力を持つパーティーはなかなか東京では見られないものだ。あえて欠点を挙げるとすれば、この日のプレイからはDaniel Bellの魅力の半分ほどしか感じられなかった気がしてしまったこと、Saloonのウーハーが前日に破損するハプニングに見舞われ、いつもの力が発揮できていなかったことは残念だった。しかし、それを補って余りあるレジデント勢とyoshikiの名演と、ゲストのタレント性を超えたパーティーそのものの魅力によって、最終的には成功を収めることが出来たのではと思う。CABARETの実力と完成度を存分に味わうことが出来た一夜であった。