- Ewan SmithはUK新世代のハウス・プロデューサーのひとりだが、彼自身はガラージに影響を受けた同世代の若手プロデューサーたちよりももっと抑制されたサウンドを好んでいる。今年はじめにHypercolourからリリースされた「Disarray」には彼の内省的なムードが反映されていたし、Secretsundazeからは初登場となるこのEPでは内面のさらに深い部分にまで入り込んでいこうとしている。
この4トラックEPは普段は明るめのサウンドが中心となっているSecretsundazeのリリース群にあって、ひときわ薄暗さを感じさせる。そのサウンドは豊かで、物憂いムードを放ちながらもセクシーですらある。SmithはUnderground Qualityのようなボンヤリとしたサウンドを援用しつつも、彼らしい手法のなかに落とし込んでいる。"Times"ではメリスマティックなヴォーカル・サンプルを使い、軽やかで美しいキーでデリケートなストラクチャーを構成しつつ、不釣り合いなほどラフに疾走するドラムを対比させている。いっぽう、"Be Dark"では洞窟の天井を駆けのぼるような音響のなかでオルガンのメロディが各小節ごとにビートを追い越してしまいそうなほど横滑りしていく。
"What You Need"はごく簡素な造りで、至福のメロディの波が無骨なビートに乗っているのだが、そのフィルターがかったサウンドはふるいにかけられたかのように段々と薄くなっていき、トラックのディテールを浮き彫りにしていく。"Squared"はその穏やかなベースラインと柔らかなストリングス・スタブに彩られた冒頭こそスムーズな手触りだが、鋭いハイハットが鳴りはじめると途端にトラックの表情が一変し、恐怖感を煽るようなグルーヴへと変貌する。こうしたコントラストを落とし込める力量こそ、Smithを最注目のUKハウス・プロデューサーたらしめている所以だろう。
Tracklist A1 Times
A2 Re Dark
B1 Squared
B2 What You Mean